Kadoさんのブログ

日々のあれこれを綴ります

澤地久枝『琉球布紀行』

澤地久枝『琉球布紀行』とブックカバー先日の演奏会の後、聴きにいらしたYさんがブックカバーを差し入れてくださった。しっかりした生地はリバーシブルで、裏は「琉球織物」と書いてあった。裏の手触りがいいので裏返し、さて何の本に掛けようかと書架を見た…

安彦良和『虹色のトロツキー』

安彦良和『虹色のトロツキー』愛蔵版 双葉社 2010安彦良和(1947-)は「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザインで知られる漫画家。我が家では次男がガンダムにはまっていたので、私も少し興味を持っていた。 ・ウクライナ、東プロシア、ガンダム2006年秋…

スズキコージの絵本

スズキコージの絵本スズキコージの衝撃的な絵本『エンソくんきしゃにのる』は、確か隣に住んでたさちおばさんが譲ってくださった絵本の山に入っていたものでした。それまで見ていた子ども向きの優しいタッチの絵本とはまるで違い、強烈な色彩感覚とダジャレ…

イーユン・リー『千年の祈り』を読む

イーユン・リー『千年の祈り』 岩波の『図書』に俳人の長谷川櫂が、「高校生や大学生に文学について話をするとき、いつも困るのは彼らが人間の本性についてあまりに無頓着なことである…(中略)…「みんないい人」なら文学はいらない……欲望に翻弄され、互に争…

『ヤマトグループ100年史』

『ヤマトグループ100年史』ヤマトホールディングス株式会社 2020年先日ヤマトグループ歴史館から宅急便で、『ヤマトグループ100年史』が届きました。前職で私は主に社史に関する業務に携わっていましたが、2011年に東日本大震災が発生したあと、自分に何がで…

沼野雄司『現代音楽史』を読む

沼野雄司『現代音楽史』 現代音楽史:闘争しつづける芸術のゆくえ / 沼野雄司 中央公論新社 2021年 v, 282p (中公新書) はじめに…i 第1章 現代音楽の誕生…3 三つの騒動/無調という沃野/抽象画との関係?/表現主義と無調/エキゾチシズムという駆動力/…

『加藤周一』を読む

海老坂武『加藤周一:二十世紀を問う』 加藤周一:二十世紀を問う / 海老坂武 岩波書店、2013 241, 2p (岩波新書)はじめに―加藤周一を読むこと 第1章 〈観察者〉の誕生…1 第2章 戦後の出発…35 第3章 〈西洋見物〉の土産…77 第4章 雑種文化論の時代…109 第5…

菅野恵理子『MIT マサチューセッツ工科大学 音楽の授業』を読む

MIT 音楽の授業MIT マサチューセッツ工科大学 音楽の授業:世界最高峰の「創造する力」の伸ばし方 / 菅野恵理子 あさ出版、2020、357p http://www.asa21.com/book/b525754.html はじめに:世界最高峰MITで音楽が学ばれる理由…3 第1章 なぜ「科学」と「音楽」…

『蟹の横歩き:ヴィルヘルム・グストルフ号事件』を読む

ギュンター・グラス『蟹の横歩き』蟹の横歩き:ヴィルヘルム・グストルフ号事件 / ギュンター・グラス;池内紀訳 集英社、2003、254pバルト海に沈んだドイツ船グストルフ号のことを知ったのは、池内紀『消えた国 追われた人々』(みすず書房、2013)を読んだ…

菅野恵理子『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』

ハーバード大学は「音楽」で人を育てる / 菅野恵理子 アルテスパブリッシング、2015 304p https://artespublishing.com/shop/books/86559-125-5/ 音楽はなによりもコミュニケーションである。コミュニケーションとは、感情と向き合うことであり、作曲家の意…

ユリ・コウチヤマの自伝

Passing it on : a memoir / Yuri Kochiyama; Marjorie Lee; Akemi Kochiyama-Sardinha; Audee Kochiyama-Holman Los Angeles, CA : UCLA Asian American Studies Center Press, ©2004.Table of ontentsAknowledgments Foreword / Akemi Kochiyama-Sardinha …

詩のアンソロジー

鮎川信夫『近代詩から現代詩へ』(詩の森文庫)思潮社 2005 明治の詩人 島崎藤村 おくめ 若菜集序詩 https://w.wiki/jsp 土井晩翠 星落秋風五丈原 https://w.wiki/jsq 薄田泣菫 ああ大和にしあらましかば https://w.wiki/jsr 蒲原有明 朝なり https://w.wiki…

絵本とメルヘン 明治学院大学図書館の貴重書コレクションの目録『絵本とメルヘン』を手に入れました。同図書館が所蔵する、169点234冊の「絵本とメルヘン・コレクション」の全書物をリスト化したものです。それぞれの表紙等の「画像集」、装丁や成立事情等を…

磯田道史『天災から日本史を読みなおす』を読む 『武士の家計簿』で一躍名をあげた磯田道史さんの、『天災から日本史を読みなおす:先人に学ぶ防災』(中公新書、2014)を読んだ。4年も前の著作だが全く知らなかったのは不覚であった。もっともこれは朝日新…

清水眞砂子さんの講演録を読む

東京こども図書館発行『こどもとしょかん』156号、巻頭の黒沢克朗さんは2歳のお孫さんにスカイプで絵本を読んであげてました。楽しんでくれてはいるものの、直接会って感じるぬくもりが無いのが残念でしたが、4歳になって孫の家に泊まった折、怖い話をせが…

加藤丈夫『「漫画少年」物語』

国立公文書館館長の加藤丈夫先生が富士電機株式会社会長時代に、講談社の編集者だった父上加藤謙一氏の仕事をまとめられた本。昨日入手してページを開いたらあまりに面白く、一気に読んでしまいました。 占領期の雑誌創刊、手塚治虫との交流、親友・宇野親美…

カズオ・イシグロの本

前々からエッセイなど読んで気になっていたカズオ・イシグロ、ノーベル文学賞をとって一気に話題になりましたが、小説を初めて読んでみました。まず『日の名残り』、そして『遠い山なみの光』。 1989年に出て英国ブッカー賞受賞の『日の名残り』は、貴族に仕…

エリザベス・アボット『砂糖の歴史』

出版されてすぐ入手したものの読む機会を逸していたこの砂糖の本、奄美大島の歴史に触れてサトウキビに俄然興味がわき、一気に読んでしまいました。カナダの歴史学者が綴った紀元前から始まる甘味料の足跡ですが、本書の大半は大航海時代以降の奴隷制の歴史…

「発達障害をめぐる19の疑問」

児童精神科医の知人が雑誌に執筆。ジャパンマシニスト社の『Chio』(ち・お)という雑誌の114号(2017年1月)で、「発達障害をめぐる19の疑問」に6人の児童精神科医・心理士が答える特集です。目次は次の通りで、とてもわかりやすい内容でした。 特集・こど…

島尾敏雄と奄美図書館(続)

島尾敏雄とヤポネシアについて調べるために借りた本『島尾敏雄とミホ : 沖縄・九州』の中に、島尾と図書館に関する文が二つ載っていました。 作家活動と図書館運営 : 奄美大島における島尾敏雄の場合 / 早野喜久江 1.はじめに 2.島尾敏雄が目指した図書館 …

島尾敏雄と奄美図書館

小説家・島尾敏雄(1917-1986)は横浜生まれですが、戦時中特攻隊員として奄美諸島の加計呂麻島で出陣を待つ間に終戦となりました。島で出会ったミホと結婚し、神戸や東京での作家生活の後再び奄美に渡って約20年間暮らしました。その間1958年から1975年まで…

『難民問題』

墓田桂著『難民問題:イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題』2016.9.25(中公新書 2394) 目次 はしがき 第1章 難民とはなにか 1 歴史の中で その紀元/ダマスカスからニュー・イングランドまで/ナンセン高等弁務官の任命/国際的な人道活動の萌芽/戦間…

『大分県の百年』

『大分県の百年』豊田寛三ほか著 山川出版社 1986 大分に旅行するに当たり、近くの図書館で借りた本。付箋をつけた場所をメモ。 p28:松方正義、養育館、生産会所 p76:富岡製糸場に女工派遣 p80:福沢諭吉 p105:大分銀行 p142:佐賀関精錬所 p160:図書館…

松居友『手をつなごうよ』

松居友さんの本、教文館で入手して一気に読んでしまいました。1998年にフィリピンのミンダナオ島に渡り、2002年にMCL(ミンダナオ子ども図書館)を設立されてからの15年の軌跡。ずっと「ミンダナオの風」という機関誌を送っていただいていたので概要は知って…

ベルリンの国立図書館の自筆楽譜

ベルリンの国立図書館の自筆楽譜 ウンター・デン・リンデンに面したプロイセン国立図書館には、ドイツ国内の手稿本や美術書などの貴重なコレクションが集められていた。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンといった有名な作曲家たちの自筆楽譜もそのひとつ…

末盛千枝子『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』(現代企画室、2010)

絵本編集者の末盛千枝子さんの本。代官山の会員制図書室ヒルサイドライブラリーで、2008年から翌年にかけ10回にわたり行われたセミナーの記録を編集したもの。毎回のテーマに沿った絵本が何冊も紹介され、上質なブックトークを聴いている心地よさだった。さ…

アンドリッチ『ドリナの橋』

イヴォ・アンドリッチ著、松谷健二訳『ドリナの橋』(恒文社、1972)を読んだ。バルカン半島のセルビアとボスニアの間を流れるドリナ川に16世紀に架けられた石の橋の、4世紀のわたる物語である。16世紀当時はオスマン・トルコ帝国の時代で、ボスニア出身でオ…

大江健三郎の本

2010年に芥川也寸志(1925-1989)のオペラ『ヒロシマのオルフェ』(1960/67)を演奏した際、テキストの著者である大江健三郎(1935-)の本を初めて手に取り読んでみた。芥川賞をとった『飼育』など初期の短編いくつかと、最新作の『水死』。T.S.エリオットに…

中野京子『怖い絵』と堀田善衛『美しきもの見し人は』

中野京子『怖い絵』を読み終わる。ヨオロッパの文化遺産を久しぶりに堪能。参考文献をみたら堀田善衛『美しきもの見し人は』が入っていて、おもわずうなずいてしまった。堀田の本は1975年の刷を持っているので、たぶんその時期に読んだ。その後朝日選書の文…

ウーラントの詩「ハーラルト」

上智大学ドイツ文学論集に寄稿した文が、機関リポジトリで読めることがわかったので、リンクをつけておきます。ダンディの交響詩『魔の森』の元になった詩です。ウーラントの詩『ハーラルト』を翻訳して http://repository.cc.sophia.ac.jp/dspace/handle/12…