Kadoさんのブログ

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澤地久枝『琉球布紀行』

澤地久枝琉球布紀行』とブックカバー

先日の演奏会の後、聴きにいらしたYさんがブックカバーを差し入れてくださった。しっかりした生地はリバーシブルで、裏は「琉球織物」と書いてあった。裏の手触りがいいので裏返し、さて何の本に掛けようかと書架を見たら、澤地久枝琉球布紀行』(新潮文庫 2004)が目に留まった。新書用のカバーだが、文庫に掛けてみた。

2013年11月に初めて沖縄へ行った帰りの那覇空港で、何か沖縄らしい本を探していて見つけた本。和装の生地について知識はなかったが、現地を取材し自らも和装を続けている澤地の筆致にぐいぐい引き込まれてしまった。久しぶりに開いて「奄美大島紬」の章を読み返してみた。

サトウキビと大島紬で支えられてきた奄美諸島だが、砂糖の価格低落の一方で大島紬の重要性はゆらいでいない。糸を紡ぎ色を染め、反物に織り上げる仕事は一人ではできず、男も女も参加する分業で成り立っていて、それぞれが入念に仕事を積み重ねている。織り手は80代を超える女性もいるが、「力みもせず、淡々として杼(ひ)を通し、筬を打つ手は狂わない。高齢なのにと思う方が間違いで、多年身につき、精神集中を要するこの手仕事こそが、年齢を超えさせているのだ。」(p100)

この時の旅行に同行したTさんは、先日の演奏会に琉球紬を着てきてくださった。和服を着たいとは思うが、私の人生では着る機会はもうないかもしれない。せめてブックカバーは大切にしたい。