Kadoさんのブログ

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『AI 2041』を読む

『AI 2041』文藝春秋、2022

AIが活躍する2041年の世界について、世界各地を舞台にした10の物語でSF作家が描き、その背景をグーグル中国元社長のAI専門家がわかりやすく解説。10の物語と解説を読み、AIとは何か、AIが作り出す世界とはどういうものか、そして人間はそれにどのように対応していく可能性があるのか、といったことがかなりイメージできるようになりました。2月の日経書評で読み図書館にリクエストしたら、9月になってやっと借り出せました。しかし2週間では読み切れないので買ってしまいました。

AI 2041:人工知能が変える20年後の未来 / カイフー・リー、チェン・チウファン著;中原尚哉訳
文藝春秋、2022
555p
ISBN 978-4-16-391642-2
目次:
イントロダクション…11

  • 未来1 恋占い(インドのムンバイ、深層学習を使った保険プログラムと契約した家族の物語)…25
  • 未来2 仮面の神(ナイジェリアのラゴス、精巧なディープフェイク動画を作る若者)…63
  • 未来3 金雀と銀雀(韓国の双子の孤児が、AI教育で成長していく姿)…103
  • 未来4 コンタクトレス・ラブ(中国の上海にいる女性とブラジルの男性とのコロナ禍での恋愛)…169
  • 未来5 アイドル召喚!(日本の東京でアイドルの死の謎を女性ファンがAIやVRを使って追いかける)…221
  • 未来6 ゴーストドライバー(AI自動運転のレースゲームに才能を発揮するスリランカコロンボの少年の活躍)…275
  • 未来7 人類殺戮計画(ヨーロッパ各地を舞台に悪意ある科学者が繰る量子コンピューティング、AIによる自律兵器のもたらす戦慄)…329
  • 未来8 大転職時代(米国サンフランシスコでAIの登場により失業に直面した大企業労働者と就職斡旋会社の話)…403
  • 未来9 幸福島(AIは人間に幸福をもたらすことができるか、カタールのドーハ沖の島での壮大な実験)…457
  • 未来10 豊饒の夢(オーストラリアのブリスベン近郊の介護施設で暮らす高齢者と介護士、貧困が消えた社会での人生)…509

謝辞…554

メモ

  • 「未来9 幸福島」の解説より:個人的な予測として、国民の支持の高い強力な指導者が統治する小国が、今後20年のうちにテクノロジーの適用においてブレークスルー的な決断をおこなう可能性は十分にあると考えている。
     ほかの候補としては、21世紀のデジタルコミューンはどうだろうか。価値観を共有する人々が個人データを提供し、コミューンの全員のために役立てる。データの利用と保護については共通の理解をベースにする。大学ではこれに近いもにがすでに実験されている。教職員と学生が初期のボランティアとなって貢献している。
     非営利AIを開発する方向もあるだろう。Wikipediaオープンソース運動のようなものだ。(p506)
  • 「未来10 豊饒の夢」の解説より:世界はいまピーター・ディアマンディのいうところの、“非物質化”を経験している。多くの物理的製品が過去のものになり、それらの機能はスマートフォンのようなプラットフォーム製品とそのソフトウェアに吸収されている。たとえばラジオ、カメラ、地図、単体のGPS機器、ビデオレコーダー、百科事典が消えた。非物質化は急速に進み、高価だった製品がほぼ無料になった。(p537)
  • 同上:本書『AI 2041』では、AIが人類の明るい未来を開くことをしめした。AIはかつてない富を生み出し、人間との共生関係でその能力を引き出し、仕事、遊び、コミュニケーションを改善し、単純作業から解放し、さらにこの章で見たように豊饒時代に導く。
     一方でたくさんの困難や危険も招く。AIのバイアス、安全リスク、ディープフェイク、プライバシー侵害、自律兵器、職業の置き換え……。根本原因はAI自身ではなく、それを使う人間の悪意や不注意だ。本書の10篇の物語でこれらを解決に導くのは、人間の創造性、機転、粘り強さ、知恵、勇気、同情、そして愛だ。必要なのは正義感、学習能力、夢みる力、信じる力だ。(下線はブログ子)
     AIの物語において人間は傍観者ではなく著者だ。AIの未来を考えるときの価値観が、やがて予言となって現実化する。(p551)

更新履歴

  • 2023.9.29:「メモ」を追加