Kadoさんのブログ

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『依存症と人類』を読む

『依存症と人類』みすず書房

依存症と人類 : われわれはアルコール・薬物と共存できるのか / カール・エリック・フィッシャー [著], 松本俊彦 監訳, 小田嶋由美子 訳
みすず書房, 2023.4
xiii, 344, 83p ; 20cm
ISBN 978-4-622-09602-3
目次:
イントロダクション…i
著者はしがき…xi

第I部 名前を探して
第1章 出発点――「依存症」以前…2
第2章 エピデミック…24
第3章 意志の病い…51

第II部 不節制の時代
第4章 憑依…74
第5章 アメリカ初のオピオイド・エピデミック…103
第6章 ジャンキー…129

第III部 現代の依存症のルーツ
第7章 近代アルコホリズム運動…156
第8章 よい薬物、悪い薬物…190

第IV部 試される依存症
第9章 リハビリテーション…222
第10章 ゼロ・トレランス…252
第11章 依存症を理解する…284

結論 回復…305

謝辞…323
解題 / 松本俊彦…329
原註…xv
図版クレジット一覧…xiv
索引…i

■メモ

  • 薬物の使用は、いつの時代も戦争と密接に関係してきた。メソポタミアの兵士はビールをふるまわれ、古代ギリシア人は戦士の飲み物「ワイン」を醸造し、ベンジャミン・ラッシュは兵士に与えられるラム酒の量を嘆き、19世紀にはバイエルンの兵士に純コカインが支給された。しかし、第二次世界大戦は、飛行機や戦艦とほぼ同じ規模で大量生産された合成麻薬が広く使用された最初の戦争であった。(中略)まもなく米国陸軍は、前線で使う救急箱の常備品としてアンフェタミンの支給を開始した。幻覚を見たり、見えない敵と戦ったりする者もいたが、米国の兵士はこれらの新しい薬物に夢中になって故郷に帰り、情熱、麻薬売買、ジャズやスイングなどに彩られた戦後文化ーー1940年代の言葉では「ペップ」〔アンフェタミン〕ーーを生んだ。(p208-209)
  • 1970年代初め、ベトナムの兵士の間にヘロインが広がり、その惨状を伝えるニュースが絶え間なく報じられると、アメリカ本土では、「麻薬の悪癖を絶てない兵士の疫病が彼らの帰国に伴って地域社会にまん延するのではないか」という懸念が高まっていった。このようなエピデミックの発生を防ぐことが、ニクソンホワイトハウスに新設された「薬物乱用防止のための特別対策局」の最初の仕事だった。(p286)