昨年の第1回に続きアンサンブル・トーンシーク第2回演奏会を聴きました。二日間同じプログラムの2日目、会場のトーキョーコンサーツ・ラボは満員の盛況。昨年はソロの曲が多かったですが、今回はアンサンブルをじっくり。『月に憑かれたピエロ』はCDで聴いたことがあるものの漠然とした印象しかなかったので、詳細を初めて知りました。後の2曲は初めてでしたが、55年前、24年前、111年前にそれぞれできた作品にも関わらず、どれも新鮮で驚きに満ちた音楽でした。
最初のドナトーニは題名の通り、どの楽器もかそけき音の積み重ねで、それが有機的に絡み合っていつのまにか豊穣な世界を形作っている印象でした。2曲目の野平作品は、シェーンベルクと作曲家自身のスタイルが行き来すると解説にありましたが、緻密に構築された音楽の構造体が眼前に繰り広げられました。
休憩後にいよいよシェーンベルク。語られるドイツ語のテキストと歌い手による日本語訳がプログラム冊子に載っていたので、文字を介して複雑な音楽を楽しむことができました。3部からなる曲はそれぞれ7つの詩から構成され、全体で21篇。音楽のモチーフもこの3、7、21という数字があちこちにちりばめられているとのこと。出演者も7人。歌い手は顔にピエロの化粧を施し、ドイツ語を自在に操って見事な歌唱(語り)を披露してくれました。演奏者もピアノとチェロ以外は複数の楽器を担当し、各人の豊かで奥行きのある音楽性を指揮者が実に巧妙に束ねあげ、実演を聴く楽しみを何重にも味わうことができました。若い演奏家たちの実り豊かな舞台に接した至福の時間でした。
出演者は前回のVnとClが入れ替わっていましたが、新しい時代の中でこれからも豊かなアンサンブルを聴かせてくれることを期待します。(2023年7月28日)
Ensemble Toneseek Vol.2 ~月に憑かれたピエロ ~
2023年07月27日(木)・28日(金)19:00開演
会場:Tokyo Concerts Lab.「トーキョーコンサーツ・ラボ」プログラム(両日同じ)
- F.ドナトーニ:ひそやかに F.Donatoni: Etwas ruhiger im Ausdruck (1967)
- 野平 一郎:もう一つの...月 I.Nodaira: Une autre… Lune (1999)
- A.シェーンベルク:月に憑かれたピエロ 作品 21 A.Schoenberg: Pierrot lunaire (1912)
出演者:
- 指揮: 馬場 武蔵
- 声: 根本 真澄
- フルート: 齋藤 志野
- クラリネット: 鄭 圭祥
- ピアノ: 秋山 友貴
- ヴァイオリン: 山本 佳輝
- チェロ: 下島 万乃
アンサンブル・トーンシーク https://ensembletoneseek720010849.wordpress.com/2023/03/09/vol-2/
■参考