Kadoさんのブログ

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「探楽愉快in蓼科」を聴きました

「探楽愉快in蓼科」プログラム

ニッポニカのメンバーによる室内楽「探楽愉快in蓼科」を聴きました。このコンサートでは今年2月19日に開催された「探楽愉快Vol.5 さまざまな歌」の曲目から、寺島陸也、林光、シューベルトの3曲に、芥川也寸志の作品を加えた4曲が演奏されました。2月の演奏会も聴きに行きましたが、いずれの作品も一段とさらいこまれ、深みを増していると感じられました。

1曲目はヴァイオリン独奏で、寺島陸也作曲の『グリーンスリーブス変奏曲』。イギリスの有名な「グリーンスリーブス」のメロディをテーマに、7つの変奏が繰り広げられます。バロック風、ロマン派風などとプログラムノートにありましたが、それぞれ手の込んだ変奏に奏者は大胆に挑んでいました。途中少しばかりほころびがあったものの、変奏曲の持つ色彩感あふれる音楽の響きを楽しむことができました。

2曲目はピアノ独奏で、芥川也寸志作曲『24の前奏曲』より12曲が演奏されました。長調短調全ての調性で作曲された24曲のうち、長調の12曲が選ばれ、ハ長調から始まってシャープを一つづつ増やし、最後にもう一度ハ長調の第1番が演奏されました。芥川の作品には室内楽からオペラまで長年数多く親しんでいるので、どの曲にも作曲家の横顔をうかがうことができました。短調の12曲も聴いてみたいものです。

3曲目は林光が1965年に作曲した『ヴァイオリンとピアノのためのラプソディ』。プログラムノートによると作曲者はベトナム戦争を背景に作曲したとのこと。1954年から1975年まで続いたベトナム戦争は、作曲者の精神だけでなく、同時代を生きた多くの人々に多大な影響を与えました。私もその時期に青春を過ごし、2007年にニッポニカでハノイ演奏旅行に行き味わったベトナムの空気は忘れ得ません。社会と対峙し続けた作曲家の意志に、二人の演奏者は十分に寄り添って音楽作りをしていたと感じました。

4曲目はシューベルトの『幻想曲ハ長調D.934』。2月に聴いた時も途中で聴こえてくる歌曲のメロディにはっとしたものの、その時はそれ以上調べずにいました。今回も同じ歌曲「挨拶を送ろう」の旋律を耳にして、シューベルトの甘い音の運びに酔いしれました。ここでも歌曲の旋律がいくつかの変奏にアレンジされ、耳を楽しませてくれました。20分を優に超える作品を最後まで表情豊かに、緊張感を持って弾き切った二人の奏者に拍手です。

アンコールには、芥川也寸志作曲の『秋田地方の子守歌』。この曲は2011年の「探楽愉快Vol.3 3人の会」でも演奏されています。何回も演奏を重ねることで、奏者にも聴衆にも一層作品への理解が深まります。これからも再演が続くことを期待します。

探楽愉快in蓼科
生誕105年記念 渡邉曉雄先生へのオマージュ

出演:アンサンブル探楽愉快
    河野航(Pf)、加藤のぞみ(Vn)
日時:2023年7月1日(土)15時開演
会場:渡邉曉雄メモリアルホール(三井の森、ハーモニーの家)
主催:ハーモニーの家の会
後援:茅野市教育委員会、株式会社三井の森

歌曲「挨拶を送ろう」の原題を探した小川昂『洋楽索引』のページ。Sei mir gegrüsst!(→Schubert)と記載されている。