Kadoさんのブログ

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『抵抗と適応のポリトナリテ』

田崎直美『抵抗と適応のポリトナリテ』

占領下のフランスの音楽家たちの軌跡を追った労作。1939年第二次世界大戦勃発、1940年6月パリ陥落、7月ヴィシー政府成立。そして1944年8月パリ解放までの間の、ヴィシー政権下での音楽家たち。ヴィシー政府とは何か、その音楽政策とは何かをまず詳しく解説。その中で「適応」した音楽家、「抵抗」した音楽家、様々な動きを資料を駆使して描いている。プーランクオネゲルコルトー、ミヨー、メシアンなど著名な音楽家たちそれぞれの人生が切り取られ語られる。戦争が遠い国の話ではなくなった現在、実に示唆に富んだ読書だった。巻末の年表や索引も詳細。なおタイトルにある「ポリトナリテ」は、「多調」を表すフランス語 polytonalité(英語はpolytonality)。「多調」は一つの曲に異なった調が同時に演奏されることなので、それを「抵抗」と「適応」という二つの態度が共存していた時代に適用している。

抵抗と適応のポリトナリテ:ナチス占領下のフランス音楽 / 田崎直美
アルテスパブリッシング, 2022年, 276, 69p


序論 占領下のフランスとは
第一部 占領下の音楽政策と制度-占領によりフランスでは何が変わったのか
第一章 音楽政策にかかわるキーワード
第二章 ヴィシー政府機関と音楽政策
第三章 ヴィシー政府が支えたフランス音楽の場

第二部 占領下を生きる音楽家-立場の選択
第一章 恩恵を受けた音楽家たち
第二章 「適応」した音楽家たち
第三章 虐げられた音楽家たち

第三部 解放
第一章 音楽活動の断絶と継続
第二章 音楽家の粛清
第三章 音楽家たちのその後


あとがき
注記
年表
参考文献
主要用語索引
主要人名索引
図版出典

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