バロック音楽の大家コレッリと、彼に影響を受けた作曲家の作品を集めたコンサートを聴きました。演奏はいずれもこの分野の第一人者ばかり、贅沢な時間でした。トリオ・ソナタというと、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの組み合わせを思い浮かべますが、それはずいぶん後の話で、コレッリの時代には2つの旋律楽器と通奏低音、というのが標準(終演後に鈴木秀美さんに確認しました!)。今回も旋律楽器である2本のヴァイオリンと、通奏低音のチェロとチェンバロ、という編成でした。
前半に奏されたコレッリとテレマンのトリオ・ソナタでは、2つの旋律が絡み合う音楽を通奏低音ががっちり支え、磨きこまれた室内楽を楽しみました。ジェミニアーニとボーニはソロ楽器と通奏低音の組み合わせで、ソリストの音楽がそれぞれの世界を形作り、宮廷音楽の優雅さを味わいました。
後半ではまずチェンバロのソロで、コレッリと同時代を生きたパスクィーニのパルティータ。テーマが次々変奏されていく音の空間が心地よかったです。次のコレッリのヴァイオリンソナタでは、同時代の何人もの奏者が異なる装飾音を演奏したそうで、今回も4つの楽章ごとに誰の装飾音を使うかが事前に若松夏美さんからアナウンスされました。第1楽章は繰り返しの前と後で別の人の装飾音、第3楽章はたった8小節だけども、若松さん自身の装飾音とのこと。演奏が始まるとそれらが見事に自在に弾き分けられているのが伝わり、本日の白眉でした。
F. クープランの『コレッリ讃』は7楽章からなり、パルナソス山のコレッリについて7つの説明文がついています。今回はそれの日本語訳を鈴木美登里さんが朗読されました。「ミューズ達に仲間に入れてほしいと懇願するコレッリ」とか「ヒポクレネの水によってコレッリは陶酔する」などの言葉の後に、色彩豊かな音楽が奏される楽しいひとときでした。そして最後にもう一度コレッリのトリオ・ソナタが演奏され、2つの旋律の絡み合いも最高潮になったところでプログラムは終了。鳴りやまない拍手に応えてもう一曲コレッリが奏され、終演となりました。
客席はほぼ満員で、若い方も多く、素敵な時間を共有できました。ニッポニカファンのYさんも神戸からいらしていて、しばしおしゃべりを楽しみました。
アルテ・デラルコ室内楽シリーズvol.3
インフルエンサー・コレッリヴァイオリン:若松夏美、荒木優子
チェロ:鈴木秀美
チェンバロ:上尾直毅
- コレッリ: トリオソナタ 作品3-11 ト短調 (1689)《若松、荒木、鈴木、上尾》
- ジェミニアーニ: ヴァイオリンソナタ 作品1-6 ト短調 (1716)《荒木、鈴木、上尾》
- ボーニ: チェロソナタ ハ短調 作品1-2 (1717)《鈴木、上尾》
- テレマン: コレッリ風トリオソナタ (1735)《若松、荒木、鈴木、上尾》
休憩
- パスクィーニ: フォリアによる変奏 (1698)《上尾》
- コレッリ: ヴァイオリンソナタ イ長調 作品5-9 (1700)《若松、上尾》
- F. クープラン:『コレッリ讃』 (1724)《若松、荒木、鈴木、上尾》
- コレッリ:トリオソナタ イ長調 作品3-12 (1689)《若松、荒木、鈴木、上尾》
■作曲家の生没年は次の通り
- パスクィーニ Bernardo Pasquini (1637-1710)
- コレッリ Arcangelo Corelli (1653-1713)
- F. クープラン Françcois Couperin (1668-1733)
- テレマン Georg Philipp Telemann (1681-1767)
- ジェミニアーニ Francesco Geminiani (1687-1762)
- ボーニ Pietro Giuseppe Gaetano Boni (?-1741)
2023年7月9日(日) 14:30開演 としま区民センター6F小ホール
アルテデラルコHP