Kadoさんのブログ

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ホセ・アンドレス『島を救ったキッチン』を読む

ホセ・アンドレス『島を救ったキッチン』

2017年9月にハリケーン・マリアがカリブ海プエルトリコを襲い、壊滅的な被害をもたらした。アメリカで複数の高級レストランを経営していたシェフのホセ・アンドレスは直ちにプエルトリコへ向い、数々の困難を乗り越え、多くのシェフや現地住民ボランティアなどの協力者を得て、膨大な量の食事を作り住民に配布した。彼とそのチームであるNGOワールド・セントラル・キッチン(WCK)の活動を記したこの本は、2018年にアメリカで出版された。その後、WCKは2020年からのコロナ禍でも活動し、2022年にはウクライナの戦場で、2023年にはトルコ・シリアの地震被災地でも食事を提供している。

島を救ったキッチン:シェフの災害支援日記inハリケーン被災地・プエルトリコ / ホセ・アンドレス、リチャード・フォルフ;御舩由美子訳
双葉社、2019.12、406p
原題:We fed an island : the true story of rebuilding Puerto Rico, one meal at a time
ISBN:978-4-575-31513-4
目次と概要:

  • 序文…6(プエルトリコにルーツを持つ俳優リン=マニュエル・ミランダらによる)
  • プロローグ…11(アンドレスのプエルトリコとの関り)
  • 第1章 上陸…19(ハリケーン・マリアによる被災を知り、アンドレスは4日後に空路でプエルトリコに降り立つ。行政の支援は早々に見切り、翌日知り合いのレストランの厨房に現地業者から食材を大量に仕入れ、SNSで注文を受ける。3日目から調理を始め、サンドイッチ500人分と温かい料理2000人分を作り、被災者に配る。他のシェフやボランティアの協力者など次々得て、2日目はサンドイッチ1000人分、料理3000人分を作って病院スタッフにも食事を提供)
  • 第2章 世界を食べさせる…71(アンドレスの食糧支援は2010年のハイチ大地震に始まり、NGOワールド・セントラル・キッチン(WCK)が立ち上がる。2012年のハリケーンで食糧支援をしている南部バプティスト連盟を知り、その知恵に学ぶ)
  • 第3章 発見…93(プエルトリコアメリカの植民地から自治領となった歴史)
  • 第4章 “大きな水”に囲まれた島で…105(災害救援を仕切っているFEMAアメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)の実情とホワイトハウスの指令の実態、プエルトリコは不穏だという思い込み。FEMAと結託している赤十字、食料と水を最優先課題とせず入札と契約に明け暮れる行政。実情を全く理解しないトランプ大統領。陸軍工兵隊の兵士が島の詳細地図を作ってくれる。CNNの取材を受け実態を話す)
  • 第5章 アリーナへ…157(1週間たち、より広大なアリーナへ移り、さらに島全体の学校の給食設備を使っての食糧支援を企画する。トランプ大統領の島訪問。FEMAが契約した別業者の不首尾。マスコミの広報で寄付を集める。多くのボランティアの情熱に励まされる。12日が過ぎ、ワシントンDCに一度帰る)
  • 第6章 「食事」とは何か…213(FEMAがしている食糧支援は戦闘用食MREを配布することだが、MREは評判が悪く食事とは言えない。WCKでは毎日ハムチーズ入りサンドイッチを作って住民に喜ばれ、それまでに計20万食を配った。しかし支援が必要な220万人には1日に600万食配る必要があるが全く足りない。FEMAとの契約は双方の主張が全くかみあわない。山間部を視察するが治安が悪いと言われていたのに住民は皆助け合って共同体を維持していた)
  • 第7章 怒りと失望と…263(離島に出向き支援の体制を整える。1か月が過ぎるが政府の支援体制は十分には程遠い。FEMAにも赤十字にも失望)
  • 第8章 変化の兆し…307(22日目、FEMAの態度が柔軟になる。住民たちは「受け取るよりも、与える方がいい」と考え、ボランティアに参加している。1か月後、支援の行き届かない島の奥地や離島に再び出向き食事を配る。被災者がWCKから学び自分たちで料理を作り食事を配る現場に居合わす。住民に食料が行きわたり始めているのを知り、支援を縮小する決意。食事は足りても医薬品が不足していることを知り、知り合いを通じて送ってもらう。感謝祭に七面鳥を配ってから活動を縮小することにする)
  • エピローグ…363(2か月間で300万食作り、ボランティア2万人が参加し、24か所の厨房、7台のフードトラック、ガソリンは料理と引き換えで入手、優秀なシェフは優秀な経営者、被災地では計画よりも実行)
  • 謝辞…387(アンドレスから全ての協力者へ)
  • 訳者あとがき…404