Kadoさんのブログ

日々のあれこれを綴ります

オペラ『ランスへの旅』を観ました

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オペラ「ランスへの旅」ポスター、サイン入り
昨日はロッシーニのオペラ『ランスへの旅』を新国立劇場で観ました。藤原歌劇団の公演ながら、東京二期会と新国立劇場も共催で、17人ものソリストが歌の競演を展開するという実に見事な舞台でした。1825年のフランス国王シャルル10世戴冠式を題材に、イタリアからパリに移ったばかりのロッシーニが書き上げたという背景も興味深かったです。パリの初演会場のイタリア劇場は、イタリア・オペラをイタリア語で上演することを許された唯一の会場、とパンフレットにありました。

舞台はランスの手前にある温泉地のホテル「黄金の百合(Giglio d'Oro)」。「黄金の百合」はフランス王室の紋章フルール・ド・リスとのことですが、そうした紋章学の蘊蓄も奥が深そうです。そもそもオペラのタイトルも、『ランスへの旅、または金の百合の宿(Il viaggio a Reims ossia L'albergo del giglio d'Oro)』です。ランスの綴りはReims。戴冠式目指して各国からホテルに集った客人たちのドラマですが、筋はあってないようなもので、歌をお楽しみください、と開幕前の解説でした。

後半の宴会で各人が自国の歌を披露する場面では、ドイツ、ポーランド、ロシア、スペイン、イギリス、フランス、チロルの歌を、全てイタリア語で歌ったのはなかなか楽しめました。最後にローマの詩人コリンナがシャルル10世を讃える歌をソプラノで歌い上げ、初演は国王臨席であったことを思うと歴史の一幕を垣間見るようでした。

2019夏・福島の旅:国道399号~までい館~Kaon Coffee

2019年8月11日(日・祝)
5:50 出発
6:04 芝公園から首都高速へ (4.6㎞)
6:11 両国 (11.9㎞)
6:19 加平 (22.6㎞) 事故渋滞
6:50 三郷ジャンクション (30㎞)
7:19 柏 (40.9㎞)
7:23 利根川を渡る
7:25 守谷PAで休憩、朝食
7:53 守谷出発 (46㎞)
8:26 常磐道青田の中の赤鳥居
8:57 友部ジャンクション (103.5㎞)
9:04 水戸を過ぎ、2車線になる
9:27 日立中央 (148.8㎞)
    夏山のトンネル越えて福島へ
9:39 中郷PAで休憩 (168㎞)
9:57 中郷出発
10:10 いわき市に入る
10:19 いわき中央で一般道へ (206.4㎞)
    ガソリン給油
10:32 いわき市内に入る
10:45 いわき駅前から国道399号に入る (215㎞)

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10:59 阿武隈山系を遠くに見ながら399号線を走る
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11:08 ヘアピンカーブ連続の399号線をひたすら走る
    
11:40 沿道のファミマで休憩 (256.4㎞)
11:52 ファミマ出発
12:25 浪江町に入る
    399号通れず、遠回り
12:45 飯舘村に入る
13:11 いいたて村の道の駅 までい館到着 (319.5㎞)
    昼食、かきあげ丼
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14:01 たくさんの人で賑わうまでい館
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までい館で買った地元の新鮮なナスとつるむらさき
14:01 までい館出発
    県道12号で原町へ。霧雨
14:34 原町 (344.6㎞)
14:49 小高駅 (355㎞)
14:35 Kaon Coffee着 (358.5㎞)雨
    ブレンドコーヒーとプリンをいただく
15:49 Kaon発
    国道6号線でいわきに向かう
    帰還困難区域を通る
16:26 富岡 (388.6㎞)
17:00 道の駅よつくら着 (417.6㎞)
17:18 よつくら出発
17:28 四倉インターから常磐道へ (423㎞)
17:50 茨城県へ入る
18:13 大久保第2トンネル (500㎞)
19:17 三郷 (608.2㎞)
19:47 芝公園で首都高を降りる (638.2㎞)
19:57 帰宅 (641.6㎞)

今回印象的だったのは、飯舘でも小高でも、数は多くないにせよ青々と稲の育っている水田を見ることができたことでした。

広瀬容子さんの子連れ留学ブログ

アントレプレナー広瀬容子さんが2003年の子連れ留学についてブログで連載されているので、30回までを一覧にしてみました。この先まだまだ続きそうですので、それはこちらでご覧ください。

広瀬容子の子連れ留学備忘録

  1. ある日36歳で未亡人になった
  2. 伏線其ノ弐:海外日本研究司書の人たち
  3. 伏線其ノ参:ワーキングマザーの情報交換サイト「ムギ畑」
  4. 図書館情報学、どの留学先を選ぶのか
  5. ピッツバーグを目指す
  6. 推薦状、これが本当に気が重い
  7. 合格するかどうかもわからないうちに住む家を決めた
  8. ビザも下りないうちに5人分の片道チケットを買った
  9. 生活はすぐに軌道に乗った
  10. 超スピードの英語に怖気付いた
  11. 4人も育てながら大学院はやっぱり無謀だったのかも…
  12. 論文は全部読まなくていい
  13. 皆んなよくしゃべるなあー恐怖のディスカッション
  14. 子供達のアメリカ学校生活サバイバルー女の子編①
  15. 子供達のアメリカ学校生活サバイバル-女の子編②
  16. 持つべきは苦楽を共にする留学生の友!
  17. 図書館の社会的価値をお金に換算するレポート。さっぱり書き方がわからなかった
  18. 子供達のアメリカ生活サバイバル-男の子編①
  19. 週20時間の図書館の仕事、悔やむことも多い
  20. 子供達のアメリカ生活サバイバル-男の子編②
  21. デジタルアーカイブ授業のプレゼン①
  22. デジタルアーカイブ授業のプレゼン②
  23. 幼稚園児にもプレゼンの宿題が出た
  24. 授業でよく喋るアメリカ人、必ずしも大したこと言ってないと教えてくれたハンガリーの留学生
  25. 日本語補習校の宿題はハンパなかった
  26. 10年以上経って実感した留学の意義。香港のクラスメイトと企画したセミナーが日本で実現。
  27. バスがらみのエピソード、黄色いヒモだけではない。ドライバーに「降りろ」と言われてびびる私
  28. 日本語補習校に行く途中、あわや玉突き事故になりかけた
  29. ライブラリー・スクールでの履修科目。脈絡なく色んな授業を取ったことが、自分のキャリアにとっては良かったと思える
  30. 使えるものは子供でも使う。レファレンス資料とサービスという授業のレポートでは次男と長女を動員した

参考

「柳美里トークイベントin日比谷」を聴く

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フルハウスクラウドファンディング案内

作家の柳美里さんが2015年から移り住んだ福島県で、昨年オープンさせた本屋フルハウス。5月に行った時は開いてなかったので、このイベントを楽しみに聴きに来ました。

柳美里さんはもともと福島といろいろ縁があったそうで、3.11の後4月に現地を訪れ、翌2012年3月から南相馬市臨時災害放送局で毎週1回トーク番組を始められました。地元の方二人一組から話を聞く、という番組で、5年間で300組600人から様々な話を聞かれたそうです。息子さんが中学を卒業した2015年に、鎌倉から小高の北にある原町に引っ越し。息子さんは地元の高校へ入学。その後縁あって2017年に小高へ引っ越し、2018年4月にフルハウス開店。お話を伺うと本当に様々な縁がつながっていて、そのひとつひとつに真摯に取り組んでらっしゃるのがわかりました。

本屋にしたのは、若いころから会社に勤めて仕事をしたことは一度もなく、劇作家として仕事をしてきた自分にできるのは、本に関わる「本屋」だろう、と考えたから。また高校生と関わる中で演劇の指導も始めることになり、若いころの作品である『静物画』の上演後、高校生たちが解散を嘆き、東京公演を訴えたこと、そしてそれを実現したことも話されました。更に地元小高のみなさんたちと『町の形見』という作品を作り上げたというお話も深く心に残りました。

フルハウスという場所を復興のひとつの拠点にしたいという高い志、それを持続して実行していく地に足の着いた活動、そして常に優しく暖かい眼差しと語り口。柳美里さんの著作は若いころ何冊か読み、そのエネルギーに圧倒されたのを覚えています。お会いしたのは初めてですが、そのエネルギーがいったいこのかわいらしい外見のどこに潜んでいるのかと思いました。ひとつひとつの言葉を十分に吟味してから発してらっしゃるのもよくわかりました。その言葉の力を信じてらっしゃるのでしょう。それを的確に引き出す聞き手・仲俣暁生さんの寄り添い方も素敵でした。

フルハウスの施設を充実させるという今回のクラウドファンディングは「気持ち」程度の参加をしていましたが、今日のお話を聞いてもっと本格的にかかわろう、と思いました。ご案内くださった山根麻衣子さんにも深く御礼申し上げます。

■参考

2019東北行【第2日】名取から小高へ

5月4日(土)ゆりあげ港朝市

翌日は仙台駅7:26の電車で4駅目の名取へ。8:00発の乗合バス「なとりん号」で15分ほど、震災メモリアル公園下車、目の前に閖上港が広がります。地元の方の車で駐車場はいっぱい、朝市が大いににぎわっていました。震災後カナダ政府の支援で、カナダ産木材により建設されたメイプル館にて、新鮮な海鮮丼の朝食をいただきました。

閖上 震災メモリアル公園のモニュメント
海産物を購入してバス停へ戻り、震災メモリアル公園のモニュメントをお参りしました。円筒形のモニュメントは、閖上を襲った9メートル近い津波の高さとのこと。見上げるばかりのその高さにしばし言葉を失いました。隣の神社もお参りし、9:30のバスで駅まで戻りました。

・ゆりあげ港朝市〔ゆりあげ港朝市協同組合〕
宮城県名取市閖上5丁目23-20
http://yuriageasaichi.com/

名取市図書館

名取市図書館入口
3.11で建物に甚大な被害を被った名取市図書館は、代替の建物でサービスを行っていましたが、昨2018年12月に駅前の新館がオープンしました。館長のSさんとは2013年12月に知り合って以来、FBを通じて親しくさせていただいていましたので、楽しみな訪問となりました。駅からデッキで直結した複合施設の2階と3階にある図書館は9時開館ですが、入口入ってすぐのカフェと新聞・雑誌コーナーは、7:30から開いているそうです。

まずは3階へおもむき、ゆったりした書架の奥にある「名取の宝ばこ」と名付けられた情報発信コーナーへ向かいました。そこには郷土資料や震災関連の資料がいくつもの書架にたくさん配架されていました。連休中ですがどのコーナーにも利用者の姿がありました。写真を撮りたいとカウンターに申し出たら、2013年9月に知り合ったKさんがいらして、しばし会話が弾みました。2階に降りてSさんと再会、ここまでの工程は大変でしたでしょうと声をかけると、「まだまだこれからです」とのお返事。お元気そうな笑顔にこちらがエネルギーをいただきました。短時間でしたがぬくもりのある図書館の空気をたっぷり味わうことができました。

名取市図書館
宮城県名取市増田四丁目7-30
http://lib.city.natori.miyagi.jp/web/

・新・名取市図書館(宮城県)がオープン
〔NDLカレントアウェアネス 2018.12.19〕
http://current.ndl.go.jp/node/37261

小高にあるKAON COFFEE(香音珈琲)

10:37発の常磐線で次の目的地小高へ。小高の駅近くには、作家の柳美里さんが2018年にオープンした書店フルハウスがあるのです。しかしよく調べたら連休中はお休みとのことで、建物だけでも見てこようと思っていました。すると5月1日の東京新聞に「避難指示が2016年に解除された福島県南相馬市小高区にて、帰還した夫婦がコーヒー店をオープンさせた」という記事を夫が発見。これは行くしかないね、と旅程に加えました。

Kaon Coffee
11:57小高着、駅前にコンビニも、あてにしていた食堂も見当たらず、それならとコーヒー店まで歩き始めました。市街地を抜けるとのどかな田園風景が広がり、鶯をはじめ小鳥や虫の鳴声のほか何も聞こえません。通った自動車はほんの数台。タンポポの綿帽子、紋白蝶、小川の流れなどを楽しみながら50分ほどで、コーヒーカップが描かれた建物が見えてきました。

ハムチーズトースト、ジャムトースト、自家製ミネストローネ、食後にコーヒーを美味しくいただきました。店内には若い方、年配の方、数組のお客さんが入れ替わり立ち替わり。ジャズが気持ちよく響く店内から外の景色を眺め、オーナーご夫婦と会話もはずみ、ゆったり過ごしました。同じ道を駅まで戻り、心地よい疲労感。

・KAON COFFEE(香音珈琲)
南相馬市小高区小屋木字障子口5ー2
営業日は金~月曜、営業時間は10時~16時
「ジャズやコーヒー、趣味生かし「喫茶店」:小高に若者集う場を」〔福島民友ニュース 2019年04月30日〕
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20190430-373184.php

フルハウス
福島県南相馬市小高区東町1-10
https://odaka-fullhouse.jp/

常磐線を品川まで

小高駅の路線図
小高発16:14の常磐線に乗車、2駅先の浪江で代行バスに乗り換え。「帰還困難区域を通るので窓は開けないで下さい」「イノシシなど野生動物が飛び出すことがあるので、急ブレーキにご注意ください」とアナウンス。ほぼ満席のバスは静かに出発、社内もほとんど話声は聞こえず。国道を走るうちに「これから先帰還困難区域」という赤い看板。国道沿いには草木が生い茂り民家はほとんどない代わりに、ガソリンスタンドや飲食店はいくつも連なるが、すべて無人。そのうち海側の木々の向こうにクレーンなどちらほら見えてくると、シャッターの音がしばし沈黙を破る。作業用の自動車と何台かすれ違い、30分ほどで富岡駅到着。不通区間常磐線の工事が進んでいるのがうかがえ、代行バスはあと1年くらいで解消されるらしい。

富岡からいわきまで普通電車、いわきで夕食後に19:18発の特急ひたちに乗り、21:54品川着。無事一泊二日の旅を終えました。車窓から、また歩きながら見た田園風景の中には、丁度田植えが終わったばかりの水田も確かにありましたが、ほとんどは休耕田であったのが、深く心に残りました。いろいろなことを感じ、考えた二日間でした。

2019東北行【第1日】須賀川から飯舘へ

今年の3.11夜の会話

夫:連休には東北へ行こうか。
私:あら、いいわねえ。
夫:どこか行きたいとこある?
私:飯舘村の山津見神社と、名取市図書館。
夫:(地図を見ながら)飯舘はずいぶん山奥だなあ。車じゃないと無理だ。
私:家から車で行くの?
夫:いや、現地でレンタカーを借りよう。

元鉄道少年の夫は旅程を作成

・初日は品川から新白河駅までJR在来線を乗り継いで行く
・そこでレンタカーを調達し、飯舘をめぐって福島駅で返す
・福島から仙台まで阿武隈急行に乗る
・翌日は閖上の朝市に寄ってから名取市図書館へ行く
・名取から常磐線で海沿いに南下して品川へ帰る。途中代行バスを使う
私は途中の須賀川と小高へ寄ることを提案、いろいろ情報収集に励みました。

5月3日(金)いよいよ出発

朝6:33に品川発、上野東京ライン東北本線)で宇都宮へ。乗り換えて那須塩原。今度は新幹線で一駅の新白河9:48着。駅前のトヨタレンタカーでアクアという小型のハイブリッド車を借りました。国道4号線を40分ほどで須賀川到着10:50。

須賀川市民交流センター tette

須賀川 tette
今年の1月11日にオープンした須賀川市民交流センターは、東日本大震災で被災した総合福祉センターを再建し、市民交流、子育て支援などの機能を継承しつつ創造的復興を目指して作られた施設です。子どもも大人もたくさんの人々が集っている中、まずは5階の「円谷英二ミュージアム」をめざしました。須賀川出身の映画監督円谷英二の偉業を顕彰する博物館には、展示と共に沢山の本がトピックごとに配架されていました。どれも床に近い位置にあり、子どもたちがじっくり手に取って楽しめるようになっています。背表紙を眺めるだけで丁寧な選書がうかがえる書架でした。

3階と4階は図書館で、開放的なスペースに書架と閲覧席が設えてありました。2階の子育て支援センターには子どもライブラリーもあり、1階にも書架があって、建物全体に図書館が広がっているのがよくわかりました。どの階にも自動貸し出し機があって、オープンな運営コンセプトが伝わってきます。tetteのことはARGのメールマガジンで知ったのですが、事前にウェブサイトをじっくり拝見したところ、開館前から情報を随時公開し、愛称も公募して市民の中にコンセプトを共有していった状況がわかりました。この施設がどのように活かされていくのか楽しみです。

須賀川市民交流センター tette
福島県須賀川市中町4-1
https://s-tette.jp/

須賀川市民交流センターtette(福島県)がオープン〔NDLカレントアウェアネス 2019.1.17〕
http://current.ndl.go.jp/node/37397

いいたて村の道の駅 までい館

までい館
須賀川を発って郡山の北で288号線へ入り、船引でランチ休憩。349号線を経て飯舘村を目指しました。3.11後に全村避難を強いられた飯舘村のことは、寺島英弥著『東日本大震災 希望の種をまく人びと』(明石書店、2013)で知りました。河北新報編集委員の寺島さんはFBで随時発信しておられるので、2013年に知り合って以来飯舘村の状況をしばしば読むことができました。避難指示解除準備区域の指定は2017年3月31日に解除され、その年8月12日には「いいたて村の道の駅 までい館」がオープンしています。「までい」とは相馬地方の方言で、手間暇かけて、丁寧に、大切に、という意味だそうです。寺島さんの本を読むと、飯舘村の人々がいかに「までい」な生活を作り上げてきたかがよくわかりました。

さていよいよ、までい館到着14:35。広々した敷地に横長平屋建ての建物がありました。天井の高い「までいホール」を中心に、軽食コーナー、直売コーナー、特産品コーナーなどが設置され、人々で賑わっています。コンビニのセブンイレブンも入っていて、地域の方々や旅行者の利便性が図られていました。特産品コーナーで『飯舘の女性たち』(Saga Design Seeds、2016)を見つけて購入。著者の「いいたてWing19」は、飯舘村が1989年から5年間実施した女性海外派遣事業「若妻の翼」の、第1回参加者19名で構成する団体です。この事業のことも寺島さんのレポートで読み、もっと詳しく知りたいと思っていたところでした。その他特産品など調達して、までい館を後にしました。

・いいたて村の道の駅 までい館
福島県相馬郡飯舘村深谷深谷前12-1
http://www.vill.iitate.fukushima.jp/site/kanko/1404.html
https://www.facebook.com/michinoeki.madeikan/

・福島、東北の被災地のいまを伝えたい|人と人をつなぐラボ|ローカルジャーナリスト寺島英弥
http://terashimahideya.com/

山津見神社のオオカミの天井絵

山津見神社
来た道を少し戻ってから北へ進み、山の中をめぐって山津見神社15:10着。虎捕山(とらとりやま)の中腹にあるこの神社は1051年創建、山の神の使いであるオオカミを尊んでいます。3.11では無事だったものの、2013年の火災で社殿が焼失し、240枚に及ぶオオカミが描かれた天井絵も失われました。その絵の復元に東京藝術大学の学生たちが取り組み、2016年に全242枚が奉納されたのです。この顛末も寺島さんの記事で読んで以来、いつかその天井絵も見たいものだと思い続けていました。

参道を昇って社殿に参拝。中には一組のご夫婦がお参りの最中でしたが、他の参拝者はいませんでした。真新しい社殿の天井を見上げると、生き生きと描かれたたくさんのオオカミたちがいました。ゆっくりと絵を見つめ、信仰の深さ、ここに至るまでのたくさんの人々の努力に思いを馳せました。次にお札やお御籤などがある隣の部屋をのぞくと、福島県立美術館で2016年に開催された「復元天井絵」展の図録が置いてありました。そこには242枚全ての絵が掲載され、手分けして描いた20名ほどの学生たちの名前も記されていました。彼らは芸大保存修復日本画研究室の所属だそうで、中国や韓国からの留学生の名前もありました。丁寧かつ力強い取り組みに深く感動。

・山津見神社
福島県相馬郡飯舘村佐須虎捕266
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E6%B4%A5%E8%A6%8B%E7%A5%9E%E7%A4%BE_(%E9%A3%AF%E8%88%98%E6%9D%91)

・山津見神社オオカミ天井絵復元プロジェクト
https://yamatsumi-jinja.tumblr.com/

阿武隈急行で仙台へ

再びレンタカーに乗り込み、山を一気に下って1時間ほどで福島市着17:00。154キロ走ってガソリン代800円ちょっと。さて今度は阿武隈急行線阿武隈川沿いに仙台へ向かいます。乗った電車は途中の富野止まりで、次の電車は30分あとなので、無人駅の外で待つことに。鶯の鳴声に耳を澄ましていると、遠くの山際に夕日がどんどん落ち、空一杯に広がる夕焼け。実り多い一日が暮れました。

阿武隈急行線富野駅

いわきの図書館・博物館を巡る旅(2009年3月)

 二〇〇九年三月七日土曜日朝八時五十分、東京駅八重洲南口バスターミナル八番に集合した八人の図書館探検メンバーは、いわき行きのバスに乗り込んで九時三十分の定刻に出発しました。昨日の土砂降りがうそのような好天に恵まれ、一路常磐道を北へ走ります。利根川を越え関東平野をまっしぐら、おしゃべりに興じているうちに、十二時過ぎ、いわき市到着。いわき在住で長年いわきの図書館振興に尽力しているTさんが迎えに来てくださっていて、すぐに昼食を予約した「海食遊膳ふくふく」へ向かいました。本来は冬の料理のアンコウ鍋を特別に準備してもらい、いわき名物「メヒカリ」の唐揚げと焼き物をおつまみに話がはずみました。コラーゲンたっぷりのアンコウにも舌鼓を打ちました。
「いわきにてメヒカリつまむ春の旅」

 外へ出てTさんの乗用車と路線バスに分乗し、いわき明星大学へ向かいました。十五分ほどで広大なキャンパスに到着。正門の真正面に立派な図書館の建物があり、職員のIさんが迎えてくださいました。図書館は隣の学習センターと繋がっていて、書庫と閲覧スペースがゆったりととられていました。市民にも開放されているそうで、春休み中でしたが何人もの利用者が机に向かっていました。Tさんが開館時から携わったという書架には、丁寧に構築された蔵書が明るい陽光のなかに並んでいました。ひろびろとした壁には沖縄の植物をデザインした大きな絵が何枚も掛けられていて、丁度よいアクセントになっていました。外はかなり強い風が吹いていましたが、閲覧室の中は別世界のおちつきでした(1) 。
 図書館の隣は二年前に創られた薬学部の校舎で、最先端の設備を見せていただきました。薬剤師の実習スペースや就職の面談練習室のスペースまでありました。またキャンパスの反対側にはガラスのピラミッド型をした温室があり、さまざまな薬草が育てられていました。温室はあいにく中に入ることができませんでしたが、まわりにも多種多彩な薬草が栽培されており、あれこれおしゃべりしながらしばし散策しました。
「三月の風キャンパスに吹き渡る」

 帰りはまたバスと車の二手に分かれて市内へ戻ります。駅前で降りると目の前に巨大な商業ビルがそびえたち、そのエスカレーターを四階まで登ると図書館の入り口がありました。ここが一昨年十月にオープンした、いわき市いわき総合図書館です。職員の方が四階と五階のフロア全体に広がる施設を案内してくださいました。開架書架のまわりの閲覧席は利用者で埋まり、平日でもなんと三千人も来館者があるそうです。事務室の中には巨大な自動出納書庫があり、本の大きさごとに分けられたボックスにランダムに蔵書が入れられていました。書庫の中をボックスが自動で走る様子は、廊下の窓から利用者も眺めることができます。Tさんは案内してくださった職員の方といっしょに、この図書館の実現のために長年力を尽くしてこられたそうで、「気がついたら二十五年かかりました」とおっしゃっていました。地域の中で着実に実績を積まれてきたTさんの足跡に一同大感激。先駆的な施設と多くの利用者に圧倒されながら図書館を後にしました(2) 。
「図書館に溢るゝ人や春の宵」

 参加メンバーの一人はここで帰京。次にレンタカーを一台調達しSさんが運転、Tさんの車と二台に分乗して湯本にある旅館古滝屋(ふるたきや)へ向かいました。創業三百十三年という老舗旅館ではゆったりと温泉につかり、ご主人差し入れのカニもたっぷりの夕食を味わい、遅くまで団欒のひと時を過ごしました(3) 。当初の予定では「フラガール」の舞台になったスパリゾートハワイアンズにも行くはずでしたが、時間切れで残念ながらパス(4) 。

 翌朝は一風呂浴びてから宿の裏手にある温泉神社を見学。朝食では名物「サンマのぽうぽう焼き」も味わいました。部屋でコーヒーを飲んでから出発、まずはすぐ隣の野口雨情記念童謡館に立ち寄りました。古滝屋のご主人がやってらっしゃるとのことで、湯本温泉にゆかりのある野口雨情の直筆書幅や童謡資料が所狭しと並べられていました。童謡のSPレコードとラッパ型蓄音機もあり、「青い眼の人形」と「七つの子」をかけてもらいました。入り口の外には菜の花が満開でした(5) 。
「古き歌菜花の家に響きけり」

 車に戻り、畑や藪の続く中を走って向かったのは、国宝「願成寺白水阿弥陀堂」。広い庭園の向こうの池を越えると、桧皮葺の阿弥陀堂が佇んでいました。靴を脱いで中へはいると若いご住職が丁度お話をされており、平安末期の阿弥陀像は明治期の廃仏毀釈も無事逃れて現在に至っているとのこと。白水とは平泉の泉の字を分字したそうです。極楽浄土に咲く花が描かれた天井画もありがたく拝んでまいりました(6) 。
「草萌ゆる中に白水阿弥陀堂

 さて次のスポットは常磐炭田の様子を伝える「いわき市石炭・化石館」。ここは六十五歳以上は無料というのでメンバーに確認すると、八人のうち五人が該当者で会計係を喜ばせました。化石や恐竜の展示を年配のボランティアガイドさんが説明してくだり、エレベーターで地下にもぐって往時の炭鉱の展示を見学しました。最初は手で掘っていた石炭を機械で掘るようになった経過や、夫婦で力を合わせていた様子、事務所や生活の有様など、実によくわかりました。外に出ると、昭和天皇が戦後行幸された時の記念碑も見ることができました。常磐炭田は一九七六年に閉山したそうです(7) 。
「八人中五人が無料のどかなり」「炭砿の跡に散りぬる桃の花」

 ここで二人のメンバーが別れて湯本駅に向かいました。残った六人は車でシーフードレストラン「メヒコ」へ。メキシコで修行されたという社長さん経営の店の真ん中は温室になっていて、なんとフラミンゴが二十匹ほど飼われていました。ピンクのフラミンゴを見ながら、名物のカニピラフやシーフードスパゲッティなどをゆっくり味わいました。店の前でKさんのカメラで記念撮影となり、一同フラミンゴよろしく片足をあげてパチリ(8) 。
 いよいよ最後の目的地、小名浜港へ向かいます。丁度港祭をやっていたので、ちょっと下車して海産物や海魚の水槽などを見学。「サンマをきれいに食べるコンテスト」など楽しいイベントの最中でした。すぐ先の海辺にそびえるガラスばりの巨大な建物が「アクアマリンふくしま」。二〇〇〇年に開館したこの福島県の施設は環境水族館という名前がついていて、さまざまな視点から海の姿を教えてくれるしくみになっています。小さな魚だけでなくアザラシ・セイウチ・トド・オットセイなど巨大な生き物の水槽もあり、ダイナミックな生態はいくら見ていても飽きませんでした。昨日味わったメヒカリや砂から顔を出しているチンアナゴのユーモラスな姿、そしてシーラカンスの生態調査も印象的でした(9) 。
「遠足の顔水槽に映りけり」

 おみやげを買いに寄ったのは水族館の隣の「いわき・ら・ら・ミュウ」と名づけられた施設で、海産物をあれこれ仕入れました(10) 。広い施設をうろうろしているうちにすこし時間をオーバーしたので、大急ぎでいわき市へ戻ってレンタカーを返却し、すっかりお世話になったTさんに別れを告げて高速バスを手配。帰りの便はかなり込んでいて、予定よりすこし遅くなりましたが、予想をはるかに越える有意義で密度の濃かった旅行の余韻をたっぷり味わいながら、帰路につきました。
「山笑ひバスは高速ひた走る」

(文中の句は全て筆者作です)

【脚注】
1) いわき明星大学図書館 http://www.iwakimu.ac.jp/library/
2) いわき市立図書館 https://library.city.iwaki.fukushima.jp/
3) 古滝屋 http://www.furutakiya.com/
4) スパリゾートハワイアンズ http://www.hawaiians.co.jp/
5) 野口雨情記念湯本温泉童謡館 http://www.douyoukan.com/
6) 白水阿弥陀堂境域(文化遺産オンライン) http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/190232
7) いわき市石炭・化石館 http://www.sekitankasekikan.or.jp/
8) シーフードレストラン メヒコ http://www.mehico.com/
9) アクアマリンふくしま https://www.aquamarine.or.jp/
10) いわき・ら・ら・ミュウ http://www.lalamew.jp/

初出:『ふぉーらむ』第6号(図書館サポートフォーラム、2009年9月)

■後日譚
 この旅行記は2009年に書いたものですので、ブログ掲載にあたり脚注のリンク先を確認しました。するとアドレスが変更になったところがいくつかありましたが、いずれも健在でした。どの施設も3.11を経てどうされたか気になっていましたので、何よりでした。