Kadoさんのブログ

日々のあれこれを綴ります

2019東北行【第1日】須賀川から飯舘へ

今年の3.11夜の会話

夫:連休には東北へ行こうか。
私:あら、いいわねえ。
夫:どこか行きたいとこある?
私:飯舘村の山津見神社と、名取市図書館。
夫:(地図を見ながら)飯舘はずいぶん山奥だなあ。車じゃないと無理だ。
私:家から車で行くの?
夫:いや、現地でレンタカーを借りよう。

元鉄道少年の夫は旅程を作成

・初日は品川から新白河駅までJR在来線を乗り継いで行く
・そこでレンタカーを調達し、飯舘をめぐって福島駅で返す
・福島から仙台まで阿武隈急行に乗る
・翌日は閖上の朝市に寄ってから名取市図書館へ行く
・名取から常磐線で海沿いに南下して品川へ帰る。途中代行バスを使う
私は途中の須賀川と小高へ寄ることを提案、いろいろ情報収集に励みました。

5月3日(金)いよいよ出発

朝6:33に品川発、上野東京ライン東北本線)で宇都宮へ。乗り換えて那須塩原。今度は新幹線で一駅の新白河9:48着。駅前のトヨタレンタカーでアクアという小型のハイブリッド車を借りました。国道4号線を40分ほどで須賀川到着10:50。

須賀川市民交流センター tette

須賀川 tette
今年の1月11日にオープンした須賀川市民交流センターは、東日本大震災で被災した総合福祉センターを再建し、市民交流、子育て支援などの機能を継承しつつ創造的復興を目指して作られた施設です。子どもも大人もたくさんの人々が集っている中、まずは5階の「円谷英二ミュージアム」をめざしました。須賀川出身の映画監督円谷英二の偉業を顕彰する博物館には、展示と共に沢山の本がトピックごとに配架されていました。どれも床に近い位置にあり、子どもたちがじっくり手に取って楽しめるようになっています。背表紙を眺めるだけで丁寧な選書がうかがえる書架でした。

3階と4階は図書館で、開放的なスペースに書架と閲覧席が設えてありました。2階の子育て支援センターには子どもライブラリーもあり、1階にも書架があって、建物全体に図書館が広がっているのがよくわかりました。どの階にも自動貸し出し機があって、オープンな運営コンセプトが伝わってきます。tetteのことはARGのメールマガジンで知ったのですが、事前にウェブサイトをじっくり拝見したところ、開館前から情報を随時公開し、愛称も公募して市民の中にコンセプトを共有していった状況がわかりました。この施設がどのように活かされていくのか楽しみです。

須賀川市民交流センター tette
福島県須賀川市中町4-1
https://s-tette.jp/

須賀川市民交流センターtette(福島県)がオープン〔NDLカレントアウェアネス 2019.1.17〕
http://current.ndl.go.jp/node/37397

いいたて村の道の駅 までい館

までい館
須賀川を発って郡山の北で288号線へ入り、船引でランチ休憩。349号線を経て飯舘村を目指しました。3.11後に全村避難を強いられた飯舘村のことは、寺島英弥著『東日本大震災 希望の種をまく人びと』(明石書店、2013)で知りました。河北新報編集委員の寺島さんはFBで随時発信しておられるので、2013年に知り合って以来飯舘村の状況をしばしば読むことができました。避難指示解除準備区域の指定は2017年3月31日に解除され、その年8月12日には「いいたて村の道の駅 までい館」がオープンしています。「までい」とは相馬地方の方言で、手間暇かけて、丁寧に、大切に、という意味だそうです。寺島さんの本を読むと、飯舘村の人々がいかに「までい」な生活を作り上げてきたかがよくわかりました。

さていよいよ、までい館到着14:35。広々した敷地に横長平屋建ての建物がありました。天井の高い「までいホール」を中心に、軽食コーナー、直売コーナー、特産品コーナーなどが設置され、人々で賑わっています。コンビニのセブンイレブンも入っていて、地域の方々や旅行者の利便性が図られていました。特産品コーナーで『飯舘の女性たち』(Saga Design Seeds、2016)を見つけて購入。著者の「いいたてWing19」は、飯舘村が1989年から5年間実施した女性海外派遣事業「若妻の翼」の、第1回参加者19名で構成する団体です。この事業のことも寺島さんのレポートで読み、もっと詳しく知りたいと思っていたところでした。その他特産品など調達して、までい館を後にしました。

・いいたて村の道の駅 までい館
福島県相馬郡飯舘村深谷深谷前12-1
http://www.vill.iitate.fukushima.jp/site/kanko/1404.html
https://www.facebook.com/michinoeki.madeikan/

・福島、東北の被災地のいまを伝えたい|人と人をつなぐラボ|ローカルジャーナリスト寺島英弥
http://terashimahideya.com/

山津見神社のオオカミの天井絵

山津見神社
来た道を少し戻ってから北へ進み、山の中をめぐって山津見神社15:10着。虎捕山(とらとりやま)の中腹にあるこの神社は1051年創建、山の神の使いであるオオカミを尊んでいます。3.11では無事だったものの、2013年の火災で社殿が焼失し、240枚に及ぶオオカミが描かれた天井絵も失われました。その絵の復元に東京藝術大学の学生たちが取り組み、2016年に全242枚が奉納されたのです。この顛末も寺島さんの記事で読んで以来、いつかその天井絵も見たいものだと思い続けていました。

参道を昇って社殿に参拝。中には一組のご夫婦がお参りの最中でしたが、他の参拝者はいませんでした。真新しい社殿の天井を見上げると、生き生きと描かれたたくさんのオオカミたちがいました。ゆっくりと絵を見つめ、信仰の深さ、ここに至るまでのたくさんの人々の努力に思いを馳せました。次にお札やお御籤などがある隣の部屋をのぞくと、福島県立美術館で2016年に開催された「復元天井絵」展の図録が置いてありました。そこには242枚全ての絵が掲載され、手分けして描いた20名ほどの学生たちの名前も記されていました。彼らは芸大保存修復日本画研究室の所属だそうで、中国や韓国からの留学生の名前もありました。丁寧かつ力強い取り組みに深く感動。

・山津見神社
福島県相馬郡飯舘村佐須虎捕266
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E6%B4%A5%E8%A6%8B%E7%A5%9E%E7%A4%BE_(%E9%A3%AF%E8%88%98%E6%9D%91)

・山津見神社オオカミ天井絵復元プロジェクト
https://yamatsumi-jinja.tumblr.com/

阿武隈急行で仙台へ

再びレンタカーに乗り込み、山を一気に下って1時間ほどで福島市着17:00。154キロ走ってガソリン代800円ちょっと。さて今度は阿武隈急行線阿武隈川沿いに仙台へ向かいます。乗った電車は途中の富野止まりで、次の電車は30分あとなので、無人駅の外で待つことに。鶯の鳴声に耳を澄ましていると、遠くの山際に夕日がどんどん落ち、空一杯に広がる夕焼け。実り多い一日が暮れました。

阿武隈急行線富野駅