Kadoさんのブログ

日々のあれこれを綴ります

第九を歌う

 ひょんなことからこの8月に第九を歌うことになりました。パートはソプラノ。オーケストラのビオラパートでは何回も弾いたことがあるのですが、歌うのは初めてです。4月から週一回の練習に通い出したところ、すばらしいヴォイストレーナーの方の指導にぞっこんな日々です。声を出すのはまず身体作りからとのことで、手足の運動、腹筋の運動、バランスをとる運動、のどの運動など、毎朝続けています。
 第九の本番は暗譜なので、ドイツ語の歌詞を覚えてみましたが、これは難なく行きそうと見当が付きました。それより先日マンツーマンのレッスンがあり、自分の欠点がよく見えてきました。つまりドイツ語を正しく発音する事より、正しい音程で声を響かせるのが私の課題。しかし朝早くは声が出ないので、休みの日は貴重な練習日です。で、今日は昔ならったドイツリートの歌集を引っ張り出して、2時間近くあれこれ歌ってみました。
 まずはシューベルトの『水車屋の娘』から。シューマンの『女の愛と生涯』も。声を出すうちに30年も前に受けたレッスンがだんだんよみがえってきました。同じ曲でも30年前と今では見える景色が違います。とても楽しい時間でした。
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末盛千枝子『人生に大切なことはすべて絵本から教わった』(現代企画室、2010)

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 絵本編集者の末盛千枝子さんの本。代官山の会員制図書室ヒルサイドライブラリーで、2008年から翌年にかけ10回にわたり行われたセミナーの記録を編集したもの。毎回のテーマに沿った絵本が何冊も紹介され、上質なブックトークを聴いている心地よさだった。さらにどの章も、読後にずっしりと心に響くものが大きい。また自分の知っている世界はこんなに小さかったのかとも思う。
 末盛さんは彫刻家舟越保武(ふなこし・やすたけ、1912-2002)の長女で、絵本出版の至光社、ジー・シー・プレスを経て1988年に(株)すえもりブックスを設立。2002年から2006年まで国際児童図書評議会(IBBY)国際理事。2010年すえもりブックスを閉鎖し岩手県八幡平市に移住。出版社の(株)現代企画室のウェブサイトに「末盛千枝子ブックス」が立ち上がり、末盛さんがかつて手がけた名作の復刊に取り組んでいる。

人生に大切なことはすべて絵本から教わった / 末盛千枝子
 現代企画室, 2010
 309p ; 20cm
 目次:
口絵写真
はじめに …6
人生に大切なことはすべて絵本から教わった
 タシャ・チューダーとの出会い …11
 仕事のしあわせ:ゴフスタインから考える …31
 生きる知恵:シャーロット・ゾロトウとともに …51
 女性の生き方を考える:ねずみ女房を入り口にして …73
 家族の風景:The Family of Man …105
 クリスマスの絵本:贈り物(ギフト)について …133
 即興詩人の旅:安野光雅さんと鷗外 …167
 アレキサンドリア図書館をめぐって:松浦弥太郎さんと語る …201
 勇気と好奇心:ピーター・シスの絵本を中心に …239
 友情について …269
末盛千枝子の仕事について / 島多代 …293
あとがき …298
本書の中で紹介された主な書籍 …309

付箋を付けたところ

「家族の風景」より
 (IBBYの創立者イェラ・レップマン『子どもの本は世界の架け橋』に関連して)レップマンは、大戦中にドイツからロンドンに逃げてきたユダヤ人です。ものすごくおっかない顔したおばさんですけれど、すごく優秀な人で、新聞記者でした。戦争が終わった時に連合軍から頼まれて、ドイツの女性と子どもたちのためになにかしてくれと言われてドイツに帰ります。そこで目にしたのは、食べるもの、着るものは連合軍が手配しているんですが、子どもたちに精神の糧である本がない、ということでした。私も知らなかったのですが、ナチスは人間を殺しただけでなく、本も焚書坑儒のように殺したのですね。そこでレップマンは、世界中に「ドイツの子どもたちに本を贈ってください」という手紙を書いて、すごくたくさんの本が世界中から集まりました。ところが、ベルギーからは「私たちはドイツのために何回もひどい目にあってきました。ドイツなんかのために、なにもする気持ちになりません」という断りの手紙がきたそうです。その後がレップマンの素晴らしいところで、「わかりました。ですが、そうであればそうであるだけ、もう二度とそのようなことが起こらないためにも、ドイツの子どもたちに本を贈ってください」という手紙をベルギーに再度送ったのだそうです。そうしたら、ベルギーから、本当に美しい宝物のような本がたくさん届いたということです。(p122-123)

アレキサンドリア図書館をめぐって」より
 (「暮らしの手帖」編集長の松浦弥太郎さんとの対談から、松浦さんがアメリカ旅行中、東海岸で知り合った本屋さんが案内してくれた図書館)それは図書館といいつつ、一般の普通の人の家なんですよ。非常に読書好きなあるご婦人がいまして、そのご婦人―たぶん七〇歳なんですけど―が、自分は本が好きで、本がどんどんどんどんたまっていっちゃう、そこで自分の家を解放して、図書館にしてしまう。(中略)要は、分かち合いたい、なんですね。
末盛:たぶん、私はこういうことが好きですよ、というのは人と人とのコミュニケーションで最高の喜びですね。もうひとつは、自分は知らなかったけれど、相手の言葉を通して自分の中にあったものが開かれる、そういう喜び。そのふたつのことは、重要なポイントではないかな、と思います。(p219-220)

「勇気と好奇心」より
 ダーウィンが『種の紀元』という本の中で、ただ一箇所、絵でしか表現できない箇所があり、それが生命が続くということを表現している樹のイメージだそうです。「進化論」で歴史を大きく転換させた学者が、その最も重要なことを絵でしか表現できなかったということはほとんど神秘的だと思います。今だにみんな「生命の樹」と言っているということでした。(p248)

参考リンク

夏蜜柑

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 ベランダの夏蜜柑の鉢植え、カイガラムシとスス病で葉っぱがすっかり黒く汚れていたのですが、歯ブラシで一枚ずつ掃除したら見違えるほどきれいになりました。歯ブラシでゴシゴシこすっても葉が落ちたり破れたりすることはなく、柑橘類のいい香りがぷーんとしてきました。するとハチがブーンと飛んできたではありませんか。自然界の生命力のすごさをまじまじと感じたことでした。
 ゴーヤとアサガオの鉢を片付けて、シクラメンビオラを植えました。冬の間楽しみたいと思っています。
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アンドリッチ『ドリナの橋』

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 イヴォ・アンドリッチ著、松谷健二訳『ドリナの橋』(恒文社、1972)を読んだ。バルカン半島セルビアボスニアの間を流れるドリナ川に16世紀に架けられた石の橋の、4世紀のわたる物語である。16世紀当時はオスマン・トルコ帝国の時代で、ボスニア出身でオスマン・トルコの宰相に出世したソコルル・メフメト・パシャ(本の中ではメフメド・パシャ・ソコル)によって架けられた。彼に因んで橋は「ソコルル・メフメト・パシャ橋」(英語でMehmed Paša Sokolović Bridge in Višegrad)と呼ばれ、第一次、第二次大戦で被害を受けたがその後再建、2007年ユネスコ世界遺産に登録されている。全長約180メートルで、石組のアーチ11個に支えられている。
 24の章からなる物語は、橋が架けられたボスニアの町ヴィシェグラードを舞台に展開する。第4章までは16世紀の橋の建設の物語。第5から8章は17世紀から19世紀中葉にかけて、トルコ人がハンガリーを撤退し、セルビア人が反乱を起こし、大洪水に見舞われ、成就しなかった結婚式があり、多彩な人間模様が橋を中心に描かれる。第9から17章は19世紀後半から20世紀初めにかけて、トルコが後退しオーストリア軍が進駐、回教、キリスト教ユダヤ教の聖職者がオーストリア大佐を迎える話、橋に駐留した若者兵の物語、常夜灯、ホテル、酒場、水道、鉄道などが町の景観と生活を変えていく物語。第18から20章は1912年から1913年にかけてのバルカン戦争の時代、セルビアがトルコに勝利し、都会の大学で学ぶ学生たちが帰省して議論を戦わし、町の空気も変わっていく。そして第21から24章は1914年の第一次大戦勃発とオーストリア軍が撤退時に橋を爆破するまで。
 読後に一番感じたのは、人種と宗教のるつぼといえるこの土地で、人々が共存し平和に暮らしていたという点だった。さまざまな対立はあるにせよ、物語の基調に流れているのは「対立」ではなく「共存」だった。
 著者アンドリッチ(1892-1975)は少年時代をこの橋の町ヴィシェグラードで過ごし、毎日橋をながめていた。彼の耳には、橋をめぐり町の人々が語るたくさんの物語がはいってきていたに違いない。大学生の会話は著者自身の投影かもしれない。400年にもわたる壮大な物語の語り口はよどみなく見事である。彼がユーゴスラビアの外交官であり、1961年のノーベル文学賞を受賞しているのはうなずける。「共存」をテーマにした物語をつむいだのは当然かもしれない。なお原著は、第二次大戦が終了した1945年に発表されている。訳書の装丁は朝倉摂とあった。

作山宗久さんの本(2)「記録管理システム」

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 作山宗久さんが執筆された、記録管理に関連する著作・翻訳の発行年順リストです。

  1. 記録管理システム / ウィリアム・ベネドン著、作山宗久訳(勁草書房、1988)284p
  2. 文書のライフサイクル / 作山宗久(法政大学出版局、1995)296p
  3. 文書管理と法務 / 抜山勇, 作山宗久著(ぎょうせい、1997)263p
  4. プレゼンテーションの技法 / 作山宗久(ティビーエス・ブリタニカ、19938)262p
  5. ドキュメントの作法 / 作山宗久(かまくら春秋社出版事業部制作、2005)227p

作山宗久さんの本(1)「青春」という名の詩

f:id:lucyblog:20150810185917j:plain 作山宗久さんが執筆された、サムエル・ウルマン(Samuel Ulman, 1840-1924)とその詩に関する著作・翻訳の発行年順リストです。内容としては1~2、3、4~7の3つのグループに分けられます。

  1. 「青春」という名の詩 : 幻の詩人サムエル・ウルマン / 宇野収, 作山宗久著(産業能率大学出版部、1986
  2. サムエル・ウルマンの「青春」という名の詩 / 宇野収, 作山宗久著(三笠書房、1993)(知的生きかた文庫)[1の文庫版]
  3. サムエル・ウルマンの生涯とその遺産 : 「青春」の詩 / マーガレット・E・アームブレスター著, 作山宗久訳(産能大学出版部、1993)[原著:Samuel Ulman and Youth by Margaret E. Armbrester. The University of Alabama Press, c1993]
  4. 青春とは、心の若さである。 : サムエル・ウルマン「詩と書翰」 / 作山宗久訳(ティビーエス・ブリタニカ、1989)
  5. 青春とは、心の若さである。 / サムエル・ウルマン著, 作山宗久訳(角川書店、1996)(角川文庫ソフィア)[4の文庫版]
  6. 青春とは、心の若さである。 / サムエル・ウルマン著, 作山宗久訳,津嘉山正種朗読, 谷村新司(テーマ曲作詞・作曲・歌)(電通ソフト開発事業センター、1997)[4の詩から7篇の抜粋朗読を収録したビデオ]
  7. 青春とは、心の若さである。 / サムエル・ウルマン[著], 作山宗久[訳](角川書店、2003)[5の詩の部分を抜粋した大活字本]

 1の目次

「青春」という名の詩 : 幻の詩人サムエル・ウルマン / 宇野収, 作山宗久著
目次:
プロローグ-洞察と探求 / 宇野収
第1章 「青春」の詩 …1
第2章 幻の詩人 …13
第3章 アラバマ州バーミンガム …31
第4章 ウルマンの人となり …63
第5章 「青春」の連環 …81
第6章 マッカーサーの「青春」 …93
第7章 「青春」の伝播 …105
第8章 詩篇 …115
サムエル・ウルマン年譜 …139
エピローグ / 作山宗久…141

 3の目次。この本の87ページからはウルマンの詩集『八十年の歳月の頂から』掲載の詩の訳文と原文が記載されています。

サムエル・ウルマンの生涯とその遺産 : 「青春」の詩 / マーガレット・E・アームブレスター著, 作山宗久訳
目次:
日本語版へのまえがき / 宇野収
英語版まえがき / 宮沢次郎
謝辞
第1章 青春:一つの哲学、一つの橋 …1
第2章 旧世界、新世界 …13
第3章 私はユダヤ人 …25
第4章 バーミングハムの歳月:教育者として …41
第5章 バーミングハムの歳月:ラビ …61
第6章 若く生きるには …73
サムエル・ウルマンの詩 …87
原注 …268
訳者あとがき …293

 4の目次(*は6に掲載の7篇、◎は1~2に掲載の10篇)。ウルマンの詩集『八十年の歳月の頂から』の全訳ですが、3とは掲載順が異なります。また3掲載の「通り過ぎし人(p188)と「無題(p228)」は載っていません。

青春とは、心の若さである。 : サムエル・ウルマン「詩と書翰」 / 作山宗久訳
目次:
序 / 宇野収 …1
八十年の歳月の頂から …11
  青春 …18*◎
詩の数々 …21
  私のパイプ …22
  神秘 …24
  黙想 …26
  死 …28◎
  時間 …29◎
  塵から塵 …30◎
  手は物語る …32
  夢 …35
  キューピッド …38
  こだま …41
  はたおりの名匠 …43
  忍耐と意志 …45*
  スピードの悪魔 …47
  人生航路の贈物 …49*◎
  讃歌 …51◎
  夢に骸骨を見る …52◎
  紡ぐ …54
  明日とは …56
  夢想 …58
  正義 …61
  終着の地 …64◎
  幻想と希望 …66
  計画か運命か …68
  みあと …70
  戦の神と富の神 …72
イスラエル-夢見る者 夢見て眺めし者 …75
  イスラエル-夢見る者 …76
あの女(ひと)の詩(うた) …81
  私の半身であった女(ひと)への追憶 …84
  婚約 …86
  三月四日 …87
  沈思 …90
  明日 …91
  昨日と今日 …93
  夢とメッセージ …100
  夜に想う …102
  霊感への祈り …104
八十年の哲学 …107
  どうってことない …108
  たしかな処方箋 …109◎
  ほほえみ …111
  共に歩む …114*
  なべてやさし …116
  あなたと私 …118◎
  義務 …119
  教えておくれ …121
軽やかな気分で …123
  明るい心の調べ …124
  楽しい時は楽しく …127*
  何が君を急がせる …130*
昼と夜 …133
  昼 …134
  夜 …136
ダラスの詩 …139
  なぜ涙を? …141*
ウルマンの三通の手紙 …143
  §1. 1902年の手紙 …144
  §2. 日付のない手紙 …157
  §3. 1918年の手紙 …165
訳者あとがき …174

大江健三郎の本

f:id:lucyblog:20150813111433j:plain 2010年に芥川也寸志(1925-1989)のオペラ『ヒロシマのオルフェ』(1960/67)を演奏した際、テキストの著者である大江健三郎(1935-)の本を初めて手に取り読んでみた。芥川賞をとった『飼育』など初期の短編いくつかと、最新作の『水死』。T.S.エリオットに深く傾倒しているのを知り、エリオットの『荒地』も久しぶりでページを繰った。丁度その年の岩波書店『図書』に大江が連載を書いていたので、何冊か入手して読んだものだ。手元に今もあるのをリストアップ。「上機嫌」はオルフェに関係の深い作品。

1月「不思議な少年ガストン・バシュラールがでてくる
2月「困難な時のための」E.W.サイードがでてくる
3月「感受性のある個性」オーデンがでてくる