2015年9月にクロアチアを旅行する機会があり、事前に読んだ『ドリナの橋』でユーゴスラヴィアの歴史に初めて触れた。様々な民族と宗教の人々が長い歴史の中で共存し、時に対立し、複雑な物語が綴られていた。
・アンドリッチ『ドリナの橋』
ドリナの橋の舞台はユーゴスラヴィア中部のセルビアとボスニアだったが、北部に位置するのがクロアチア。最初に訪れたのはアドリア海に面したイストリア半島にあるポレチュという港町。対岸はイタリアのヴェネチアで、北にはトリエステ港がある。1000年の栄華を誇った海洋国家ヴェネチア共和国の船は、みなアドリア海を渡って行った。静かなアドリア海に沈む夕日は限りなく美しかったが、歴史の絵巻が渦巻いているようだった。
・EAJRS参加とヴェネチア国立文書館訪問
クロアチアの首都ザグレブでは、Museum Documentation Centerを訪問した。複雑な歴史の中で芸術作品を継承していく努力の積み重ねが、めくるめくように伝わってきた経験だった。
・情報資源センター・ブログ
数年前から、クロアチアの更に北に位置するスロヴェニアにルーツを持つ作曲家、ヴィンコ・グロボカールの存在を知るようになった。今年発行された沼野雄司『現代音楽史』(中公新書、2021.1)には、グロボカールの作品が「常に移動、移民、亡命、弾圧、不自由……といった事柄をめぐる物語」を音楽化したもの、と書かれている(p248-249)。多様な民族、宗教、言語、文化が交差する地域で育まれた音楽家の作品に耳を傾けていきたいと思う。
・沼野雄司『現代音楽史』
・暴力/ ノイズ / グロボカール:坂本光太チューバリサイタル