Kadoさんのブログ

日々のあれこれを綴ります

リンボウ先生とマッキントッシュ

 LISAで現在使っているコンピュータは、デスクトップ(据置型)が2台、ラップトップ(携帯用)が3台、全てNEC98シリーズです。ソフトウェアは、日本語ワードプロセッサーが「松」、英文ワードプロセッサーは「Word Star」、データベースソフトが「桐」、表計算ソフトが「ロータス1-2-3」、通信ソフトが「まいとーく」というのが主なところです。初めのうちは社内文書の作成にNEC文豪miniという日本語ワードプロセッサーをほんの少し使っていただけですが、仕事の内容が多岐に渡ってくるにつれ、ハードウェアもソフトウェアもだんだん豊富になりました。
 NECの98シリーズは国内シェアが抜群で、対応ソフトウェアも大変多く、しかもよくこなれています。私自身はコンピュータに関してはほとんど素人で、学生時代にFORTRANを少しかじった程度でした。ですからMS-DOSで動くNEC98のシステムはブラックボックスに近かったのですが、ソフトウェアをいろいろ使いこなすうちにだんだん仕組みがわかってきました。そうするとこのシステムの便利さがこの上なく快適に感じられ、最近はやってきたWINDOWSもまだそんなに魅力的には映りませんでした。
 ところが先日「余は如何にしてMAC教徒となりしか」という一文を読み、自分の考えが如何に井の中の蛙だったかを思い知ることになりました。著者は林望氏、エッセイストとして有名ですがLISAではやはり書誌学者として紹介したいところです。この文は林氏が「ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録」を刊行するに際し、どのようにしてマッキントッシュを使いこなすに至ったかを詳細に述べたものです。黴臭い古文書と格闘している書誌学者が最新のアップルコンピュータを使いこなしているということだけでも驚きですが、氏はなんとNEC98や松を痛快なまでにこきおろしているのです。
 氏曰く、「NECは文豪という馬鹿げた機械を設計し高い金で売りつける」、「MS-DOSときたら何も知らない者にとっては火星語のように不可解」、「NECは互換機つぶしの為DOSに極めて陰険なプロテクトを施している」、「松は英文入力を全くサポートしていないし、日本語のルビが半角の片仮名に限られている」エトセトラ。そして氏がたどりついた救世主が、マッキントッシュだったという訳です。英語と日本語が併記され、しかも大量のデータが記載されている目録の編纂を実践した氏の言葉だけに、相当な説得力がありました。
 もちろんコンピュータのハードウェアとソフトウェアは何が良いかということは、仕事の種類・データの量・利用の方法などにより千差万別であり、マッキントッシュが万能選手ではないことは確かです。しかしながら自分の仕事の最善の仕上りを求めて最新のシステムを追求していく林氏の真摯な態度には、少なからず学ぶものがありました。機会を見てマッキントッシュに触ってみようと思っているこの頃です。   (門倉百合子)

※この林氏の「余は如何にしてMAC教徒となりしか」という文章の入手方法は、氏の著書「ホルムヘッドの謎」に書かれています。

初出:『This is LISA』No.4(有限会社リサ、1993年7月15日)