Kadoさんのブログ

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アスペルガー症候群について

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 先日オーケストラのリハーサル前に、曲の注意事項をスコアに書き込んだもののPDFがメールで回ってきました。出力してみると抜けているページがいくつもあります。送った人に聞いたら、注意事項が無いページはPDFにしなかったとのこと。言われてみれば当たり前ですが、抜けているページがあるとどうも落ち着かないという私の性癖にふと気が付きました。ああ、これはアスペルガーだな、と。
 アスペルガー症候群について初めて知ったのは、2010年のことでした。あるきっかけで関連する本や雑誌などをいろいろ読んだ中に、京都大学霊長類研究所の正高信男教授の記事がありました。氏は「もしも「アスペルガー症候群の本質的特徴を数文字で集約せよ」といわれたならば私は、ためらわずそれは「機械的秩序への志向」にあると答える」と書いておられました。言い換えれば、数値がきれいに並んでいることに非常に美意識を感じる、ということです。この説明に深く納得した私は、私自身にもその傾向があることにハタと思い当たりました。
 こだわるのは数値だけでなく、物事の秩序でもあります。ある学会でその運営が学会の理念にうたっていることとかけ離れていると感じ、役員とかなりやりとりした結果、学会を退会することにしました。このような衝突は振り返れば人生のあちこちにあったのを思い出します。自分のかかえるそういった生きにくさについて、その原因のひとつがアスペルガー症候群にある、とわかり、ほっと安堵したものです。
 安堵の理由は、この症候群は生まれつきのもので、後天的なものではないこと、そして治るものではないこと、この二つを知ったからです。親の育て方が悪かったわけではないから誰も恨む人はいないし、治らないのだから上手に付き合っていくしかない、とわかりました。10年前はともかく、現在ではアスペルガー症候群について広く知られるようになっています。それでもより多くの方にこの生きにくさについて知っていただきたいと思い、筆をとりました。
 

アスペルガー症候群とは何か / 正高信男

 (青淵 738号 2010年9月 p10-12)
要旨:近年注目を集めているアスペルガー症候群は、自閉症の一つの類型で、周囲とのコミュニケーションの問題があげられている。アスペルガー症候群の特徴は「機械的秩序への志向」にある。実証主義による科学的研究の発展には、人間が関与することで生まれる「あいまい化」を排除する志向が関わっている。過去の偉人の多くがアスペルガーだったと指摘されているが、他者とのコミュニケーションが苦手でもできる職種がかつては多くあった。しかし円滑なコミュニケーションが期待される現代は、アスペルガーの人たちはとても生きにくい。人の苦手な側面にとらわれるのでなく、長所を伸ばす努力にいそしむ発想の転換が求められている。