昨日はロッシーニのオペラ『ランスへの旅』を新国立劇場で観ました。藤原歌劇団の公演ながら、東京二期会と新国立劇場も共催で、17人ものソリストが歌の競演を展開するという実に見事な舞台でした。1825年のフランス国王シャルル10世の戴冠式を題材に、イタリアからパリに移ったばかりのロッシーニが書き上げたという背景も興味深かったです。パリの初演会場のイタリア劇場は、イタリア・オペラをイタリア語で上演することを許された唯一の会場、とパンフレットにありました。
舞台はランスの手前にある温泉地のホテル「黄金の百合(Giglio d'Oro)」。「黄金の百合」はフランス王室の紋章フルール・ド・リスとのことですが、そうした紋章学の蘊蓄も奥が深そうです。そもそもオペラのタイトルも、『ランスへの旅、または金の百合の宿(Il viaggio a Reims ossia L'albergo del giglio d'Oro)』です。ランスの綴りはReims。戴冠式目指して各国からホテルに集った客人たちのドラマですが、筋はあってないようなもので、歌をお楽しみください、と開幕前の解説でした。
後半の宴会で各人が自国の歌を披露する場面では、ドイツ、ポーランド、ロシア、スペイン、イギリス、フランス、チロルの歌を、全てイタリア語で歌ったのはなかなか楽しめました。最後にローマの詩人コリンナがシャルル10世を讃える歌をソプラノで歌い上げ、初演は国王臨席であったことを思うと歴史の一幕を垣間見るようでした。