Kadoさんのブログ

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清水眞砂子さんの講演録を読む

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 東京こども図書館発行『こどもとしょかん』156号、巻頭の黒沢克朗さんは2歳のお孫さんにスカイプで絵本を読んであげてました。楽しんでくれてはいるものの、直接会って感じるぬくもりが無いのが残念でしたが、4歳になって孫の家に泊まった折、怖い話をせがむ孫に毛布の中で怖い話をすると全身で楽しんでくれました。5歳になった孫に妹が生れ、「妹が話せるようになったら何をしてあげると聞いたら『絵本を読んでやる』と一言。」と結ばれていました。ほっこりした気分です。
 続く児童文学者の清水眞砂子さんの講演録「事実と真実のあいだで:マヤ・ヴォイチェホフスカの文学を考える」は、衝撃の内容でした。ポーランドに生れ米国へ渡った作家ヴォイチェホフスカは初めて聴く名前でしたが、『ひとすじの光』『夜が明けるまで』『LSD』といった作品を清水さんが翻訳されていて、どれもすぐに読んでみたくなりました。しかし講演は単にご自身の訳書を紹介するものではなく、戦禍の故国を脱出して米国に渡り、異邦人として書き続けた作家の生きざまに縦横に迫るものでした。「弱者と敗者」への目線、個でなく「類の声を聞きとる」、作家の姿勢に疑問を持ち距離を置く、などなど、清水さんはご自身の矜持を率直に語られていました。1941年に北朝鮮で生まれ5歳まで過ごしたというご自身の出自にも触れ、日本の中のブラジル人コミュニティに話が及び、異邦人の背負う故国の歴史の重たさについて深く考えさせられました。
 この講演は、東京子ども図書館が昨年出した児童書目録『物語の森へ』の刊行記念に、昨年6月30日同館で行われたものです。この目録は私も早速購入しましたが、丁寧な仕事の積み重ねがあふれ出たずっしりした一冊です。