Kadoさんのブログ

日々のあれこれを綴ります

暴力/ ノイズ / グロボカール:坂本光太チューバリサイタル

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Gewalt/ Geräusch / Globokar
 チューバ奏者坂本光太さんの2回目のリサイタルです。

暴力/ ノイズ / グロボカール:坂本光太チューバリサイタル

Gewalt/ Geräusch / Globokar
主催者: Kota Sakamoto

テロ、移民、感染、人種差別……SNSのトレンドが高速で更新される現代において、「変わらない一日 = 日常」は可能だろうか?グロボカールの作品の演奏 / 翻訳を通して「同時代」を見つめ直す。

曲目:
《エシャンジュ》 (Échanges)
《レス・アス・エクス・アンス・ピレ》 (Res/As/Ex/Ins-pirer)
《器楽化された声》 (Voix Instrumentalisée)
《変わらない一日》*(Un jour comme un autre)日本初演

会場:北千住BUoY(北千住駅徒歩10分)
BUoY

日時:2020年3月1日(日) 15:00開演(14:30開場)
料金:一般券3000 円, 学生券2500円(当日はいずれも500円up)

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 作曲家、演奏家ヴィンコ・グロボカール(1934-)は、その多岐に渡る音楽活動を通して、常に音楽家の政治的・同時代的なあり方を厳しく言及してきた。 
 本公演は、1973年の3つの独奏作品、1975年のシアター・ピース(音楽劇作品)というグロボカールの初期作品によって、全曲が構成されている。
 3つの独奏作品は、特殊奏法や楽器の改造による破壊的なノイズに埋め尽くされている。情緒や美しさといった従来的な音楽の美意識はバラバラに解体されてしまう。
 《変わらない一日》(日本初演)は、1970年代に実際に起こった事件に由来するシアター・ピースである。移民・公権力・国民を取り巻く、差別、暴力、疎外を生々しく描き出すことによって、社会問題を告発する。
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予約:
https://docs.google.com/forms/d/11qR49utx2anqFzUg2c3EXrZtQRim3dZ0CdNPE5sanFI/edit

問合せ:
sakamoto.tuba.concert[@]gmail.com

出演:
坂本光太 (チューバ他)
馬場武蔵 (指揮)*
根本真澄 (ソプラノ)*
Alvaro Zegers (クラリネット)*
佐野幹仁 (打楽器)*
下島万乃 (チェロ)*
水野翔子 (コントラバス)*
小野龍一 (演出)
増田義基 (音響)
植村 真  (照明)
山下直弥 (制作)

助成:
一般財団法人福島育英会
公益財団法人光山文化財

※FBの招待および参加表明は、イベントの紹介を目的としたものです。チケットの御用命は上記リンクからお願いいたします。
暴力/ ノイズ / グロボカール:坂本光太チューバリサイタル

美図連と酒井悌先生

 1980年代の専門図書館界は、BLLA旋風が席捲していました。BLLDといえばBritish Library Lending Division※のことですが、BLLAはなんとBeautiful Lady Librarians Association、訳して美人図書館員連盟、通称美図連のことです。もちろん認知された団体ではなく、年末の忘年会のためだけの組織ですが、日頃孤軍奮闘している専門図書館員にとっては他組織の人と気軽に知合える貴重な集りでした。女性ばかりではなく、中図連(中年~)やヤン図連(ヤング~)の男性陣も参加して、それはそれは賑やかなパーティーが毎年繰り広げられていました。そして酒井悌(やすし)先生はいつもパーティーの中心でした。
 酒井先生は戦後国立国会図書館の設立当初からその業務に携わり、幅広い部署で活躍されました。専門図書館協議会の創設にも尽力され、国内外の太い人脈を育て上げ、副館長として図書館業務の発展に心血を注いでこられました。1980年に退職されてからは金沢工業大学ライブラリーセンター長として、先端的な図書館を創設し、欧米の代表的ライブラリアンを招聘した国際セミナーを毎年開催され、我が国の図書館のために献身的な努力を重ねられました。私は仕事を通じて酒井先生のお人柄に接するにつけ、なんと偉大な方がおられるのだろうと心から尊敬いたしておりました。金沢の国際セミナーには一度だけご招待いただきましたが、行届いた催しに唯々感激したのを憶えています。
 酒井先生は図書館の器だけでなく、それを動かす人材の育成にも心を砕かれていたように思います。図書館どおしの連携もさることながら、ライブラリアン達が横に手を繋ぐことの大切さを、身をもって示されていたのでしょう。また官僚的保守的な国立機関におられたにもかかわらず、女性の登用に深い理解をお持ちでした。一線で活躍するライブラリアンを招いたサロンを開催され、男女の別なく若い人達のバックアップをされていたことは、多くの証言者を得ることができます。BLLAでもたくさんの女性達の圧倒的な支持を受けてらっしゃいました。
 先生が78才で亡くなられてから1年が過ぎました。けれど私の中には、先生がいつかおっしゃった「この道の外に道なし、この道をゆくより外にわが道なし」という言葉が生き生きと息づいています。(門倉百合子)
 
※BLLD(英国図書館貸出部門)は1986年、組織改革によりBLDSC(British Library Document Supply Centre=英国図書館文献供給センター)となった。

初出:『This is LISA』No.3(有限会社リサ、1993年4月15日)

アスペルガー症候群について

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 先日オーケストラのリハーサル前に、曲の注意事項をスコアに書き込んだもののPDFがメールで回ってきました。出力してみると抜けているページがいくつもあります。送った人に聞いたら、注意事項が無いページはPDFにしなかったとのこと。言われてみれば当たり前ですが、抜けているページがあるとどうも落ち着かないという私の性癖にふと気が付きました。ああ、これはアスペルガーだな、と。
 アスペルガー症候群について初めて知ったのは、2010年のことでした。あるきっかけで関連する本や雑誌などをいろいろ読んだ中に、京都大学霊長類研究所の正高信男教授の記事がありました。氏は「もしも「アスペルガー症候群の本質的特徴を数文字で集約せよ」といわれたならば私は、ためらわずそれは「機械的秩序への志向」にあると答える」と書いておられました。言い換えれば、数値がきれいに並んでいることに非常に美意識を感じる、ということです。この説明に深く納得した私は、私自身にもその傾向があることにハタと思い当たりました。
 こだわるのは数値だけでなく、物事の秩序でもあります。ある学会でその運営が学会の理念にうたっていることとかけ離れていると感じ、役員とかなりやりとりした結果、学会を退会することにしました。このような衝突は振り返れば人生のあちこちにあったのを思い出します。自分のかかえるそういった生きにくさについて、その原因のひとつがアスペルガー症候群にある、とわかり、ほっと安堵したものです。
 安堵の理由は、この症候群は生まれつきのもので、後天的なものではないこと、そして治るものではないこと、この二つを知ったからです。親の育て方が悪かったわけではないから誰も恨む人はいないし、治らないのだから上手に付き合っていくしかない、とわかりました。10年前はともかく、現在ではアスペルガー症候群について広く知られるようになっています。それでもより多くの方にこの生きにくさについて知っていただきたいと思い、筆をとりました。
 

アスペルガー症候群とは何か / 正高信男

 (青淵 738号 2010年9月 p10-12)
要旨:近年注目を集めているアスペルガー症候群は、自閉症の一つの類型で、周囲とのコミュニケーションの問題があげられている。アスペルガー症候群の特徴は「機械的秩序への志向」にある。実証主義による科学的研究の発展には、人間が関与することで生まれる「あいまい化」を排除する志向が関わっている。過去の偉人の多くがアスペルガーだったと指摘されているが、他者とのコミュニケーションが苦手でもできる職種がかつては多くあった。しかし円滑なコミュニケーションが期待される現代は、アスペルガーの人たちはとても生きにくい。人の苦手な側面にとらわれるのでなく、長所を伸ばす努力にいそしむ発想の転換が求められている。

小畑有史、黎桂桐(グィトン・リー)ジョイントライブ

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Slow Jet Coffee 2020.1.5
 同僚の坂本光太さんに誘われて、ギターのライブに行きました。中国出身でベルリン在住の黎桂桐(グィトン・リー)さんの音楽は、瑞々しさにあふれ、確かな技術と豊かな感性に裏打ちされた演奏に深く感動しました。共演の小畑有史さんの弾き語りも心に染み入りました。会場のSLOW JET COFFEEはまるでここはNew Yorkかと思うような雰囲気で、地域の生活に溶け込んだ時間と空間を楽しむことができました。忘れがたい日曜のひとときでした。

日時:2020年1月5日(日)12:00-15:00
場所:SLOW JET COFFEE
東京都足立区千住東1丁目29−11
https://slowjetcoffee.com

出演:
 Li Guitong(ギター)
 坂本光太(チューバ)(友情出演)
 小畑有史(ギター、ハーモニカ)

プログラム:
第1部 Tuba&Guitar Duet / 坂本光太&Li Guitong
1 シューベルトのセレナーデ
2 ぞうさん(Tubaの楽器紹介)
3 星に願いを
4 もののけ姫
5 ダニーボーイ(ロンドンデリーエアー)
6 川の流れのように

第2部 ギター弾き語り / 小畑有史

第3部 ギター独奏 / Li Guitong

ラ・トゥール『聖ヨセフ』

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Georges de La Tour『聖ヨセフ』(1642年または1645年)ルーヴル美術館蔵 [Public Domain]

 今朝新聞を開いたら、このジョルジュ・ド・ラ・トゥールの『大工の聖ヨセフ』という絵が載っていました。記事は作業するヨセフについての短いもので、「蝋燭を掲げている子ども」の説明はありません。
 この絵は40年以上前に、堀田善衛『美しきもの見し人は』(新潮社、1975)の中で初めて観ました。書架から本を取り出して記述を確かめると、『指物細工師聖ヨセフ』と題された絵の説明にある「老人の巨大な、労働と生活の経験に重い背中が重量感をともなってぐっとのしかかって来るのを、蝋燭の光と、それに映えた無邪気な少年(か少女か、私にはわからないが)の物問いたげな眼と口がぴたりと受け止めている。」という一文が目にはいりました。しかし前後の文にヨセフや子どもについての説明はありませんでした。なのでこの絵については光を描く画家の力量に感動したものの、題材については考えを巡らしませんでした。
 ところが今日の新聞を読んで、聖ヨセフはキリストの養父、という記述に、はっとしました。つまり彼はマリアの夫です。ですから「蝋燭を持った子ども」は幼いキリストだと考えても自然です。そうして改めて絵を見ると、蝋燭の光がもっとも明るく照らしているのは、ヨセフではなく子どもの顔であるのに気づきます。
 私はクリスチャンではありませんが、今日という日にこの絵に再会できたことを嬉しく思いました。

■目で感じる音空間(10)ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール「大工の聖ヨセフ」 音楽・文芸批評家 小沼純一日本経済新聞 2019年12月25日文化蘭〕
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191225&ng=DGKKZO53741220U9A221C1BC8000

「大正から昭和時代に遺されたピース譜から」コンサート

 セノオ楽譜を使用したコンサートが2019年10月に旧東京音楽学校奏楽堂で開催されました。同時に旧奏楽堂では企画展「セノオ楽譜とその時代~大正から昭和時代に遺されたピース譜から~」も開催されました。

特別コンサート「大正から昭和時代に遺されたピース譜から」
日時:令和元年 10月20日(日) 午後6時30分(開場:午後6時)
会場:台東区立旧東京音楽学校奏楽堂 (東京都台東区上野公園8-43)
■内容

■出演
青木高志 (Vn)/江澤聖子 (Pf)/小泉惠子 (Sop)/品田昭子 (Sop)/宮西一弘 (Ten)
■入場料:一般4,000円 / 学生2,000円 (全席自由) 
■問い合わせ

■主催:国立音楽大学附属図書館、公益財団法人台東区芸術文化財団
http://www.taitocity.net/zaidan/sougakudou/oshirase/news/2502/

《同時開催》

企画展「セノオ楽譜とその時代~大正から昭和時代に遺されたピース譜から~」
国立音楽大学附属図書館が所蔵するセノオ楽譜の中から10月20日のコンサートで演奏される楽譜を中心に公開。

会期:令和元年 10月6日(日)~10月30日(水)の公開日
公開日:日、火、水曜日(木、金、土曜日はホール使用のない場合公開)
時間:午前9時30分~午後4時30分(最終入館 午後4時まで)
会場:台東区立旧東京音楽学校奏楽堂 一階展示室
入館料:一般300円 / 小・中・高校生100円
問い合わせ:国立音楽大学附属図書館 042-536-0799
       旧東京音楽学校奏楽堂 03-3824-1988
主催:国立音楽大学附属図書館、公益財団法人台東区芸術文化財団

WikiGap エディタソンに参加しました

WikiGap東京2019プログラム
9月29日にスウェーデン大使館で開催された、WikiGapのエディタソンに参加しました。WikiGapとは、Wikipedia上の人物に関する記事のうち、女性の伝記は2割程度だという状況を解消して女性の伝記記事を増やしたい、また編集者のうちの女性の割合は1割程度だという現状を改めたい、という活動です。

当日は10時に開会、まずペールエリック・ヘーグべリ駐日スウェーデン大使のご挨拶。スウェーデンでは40年くらい前から男女格差の是正に関する政策を進めてきたこと、このWikiGapの活動は世界60か国で既にイベントを開催しており、日本では今回が最初で、10月14日には大阪でも開催の予定とのことでした。続いて国連事務次長の中満泉さんからのヴィデオメッセージが披露されました。女性の社会参加と活躍を応援される、ご自身の経験を踏まえた熱いメッセージに感激。

続いてウィキペディアン海獺さんによる編集のアドバイス、さえぼーさんによるWikiGapの解説、事例として特別ゲスト若宮正子さんの記事をその場でWikipediaにUpするデモを皆で拍手!若宮さんの凛としたお姿を近くで拝見できたのも何よりでした。

そして11時すぎから作業机にセットした各自のPCで、早速Wikipediaの編集開始。新規記事を立ち上げる人、既存の記事を編集して充実させる人、外国語版からの翻訳に挑戦する人などなど、40人ほどの参加者は各人思い思いのテーマに取り組みました。サポートする10人ほどのベテランウィキペディアンの皆さんは、誰かの手があがるとさっとその場に駆け寄って質問に答えてらっしゃいました。

私は事前に準備して下書きサンドボックスに書いておいた新規記事の原稿を、持ってきた資料によって追加したり修正したりしました。これまで20程の記事をWikipediaにあげてきましたが、やはり出典となる資料を事前にきちんと準備すればするほど充実した記事が書けるのを体験したので、今回もできるかぎり資料を集めました。Webで見られるものはURLを下書きに書いておけばいいのですが、そうでないものもあります。現物が入手できればいいですが、NDLデジタルコレクションにしか見つけられなかった資料は、前日に閲覧してここぞと思うページをコピーしてきました。本文が一応書けて出典を整えたところでウィキペディアンの先輩に確認してもらい、改善点のアドバイスをいただいて改訂。何度か繰り返して15時半ころになんとか公開できました。

執筆の途中で雑誌社の方のインタビューを受けました。参加の動機、どんな記事を書いているか、など尋ねられたので、思うところをいろいろしゃべりました。翌日にはきちんと要点をまとめて記事にしてくださったのは嬉しかったです。

ここに載った私の発言は下記部分。
「すでにアカウントを持っていて、20記事くらいを書いていたけれど、改めてイベントに参加していろいろ発見したかったんです。……正しい情報を手渡したいということは司書の職業倫理に通じるものがあります。見ていただきたいのは出典。ウィキは出典と利用者を結びつけるための文章だと思っています」(門倉百合子さん・司書)

インタビューでは話しませんでしたが、いつも考えているのは次の事です。「Wikipediaは信頼できないから見ない」という人に出会うことがあり、それはそれで一つのスタンスだと思うのですが、現代の特に若者は何でも疑問点は検索し、その結果が得られないものは世の中に存在しない、と考えがちなのもよく見る光景です。私は司書として正しい情報を利用者に伝えるのが大事と思って仕事をしてきたので、たくさんの人が見るWikipediaを非難したり無視したりするのでなく、Wikipediaに出典の確かな情報を載せることに人生の時間を使いたい、とあるとき考えました。そこでまずWikipedia自体に書いてある編集のやり方を独学し、いくつかのイベントに参加して先輩方にポイントを教わりながら、記事の作成と編集を実践してきた次第です。

他の参加者の皆さんとは、ランチタイムや夕方のバーベキューの席でたくさんおしゃべりしました。それぞれの参加動機を伺うとなるほどと得るものが多く、最後まで実に充実した一日でした。スウェーデン大使館のサポートも何から何まですばらしく、スウェーデンという国の向かう方向を垣間見させていただいた気がします。また世界は途切れなく繋がっているのを実感しました。イベントに関わられた皆様全員に深く感謝申し上げます。

【追記】2019.10.20

  • 国連事務次長の中満泉さんからのヴィデオメッセージがスウェーデン大使館のFBで公開されました。

[https://www.facebook.com/EmbassyofSwedenTokyo/videos/402182257342679/?__xts__[0]=68.ARD49tR33aZ7M3GBqDCaSC7Dwm6yMNFfAc-2bCdFri3S7-T6Ix7hOnjSj8ZuYUc06PELTTONEgYJO5T4KjhUBNeP6yEKn4Kc5tV6k6mb8gjL7jSvj7PkYPjCFSV-JtbxQaD0l9sZ2OzRgVlny7Ix-GUd2fEEaGFVia-YtUfmfMc3R0DLS90hSrBzJQCZUY5bTufG7h47rMe1b84eMM-qbCwJ69f0lxekEuQWBP-2gvGNu7eEj830Mp3oVyjG2NwhSilDySlOLQ5cVrX34jjCAr74LEJ5TBio_dc_uJl-YGHnnKN0bi9g5zSQmFRxLLW_UcpOPgG9pUtjrq10XMdSDmFFrWAVSif-J3I&__tn__=H-R:title]

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